「木を見て森を見ず」自虐的な記述見過ごし、教科書検定の限界

 中学校の歴史教科書に、「従軍慰安婦」の呼称が復活することになったのは、教科書改善の流れに逆行するといえるだろう。ほかにも自虐色の強い記述が複数残り、検定制度の限界が垣間見える結果となった。

 中学校教科書に「従軍慰安婦」が初めて登場したのは、平成8年に公表された7年度検定からだ。これがきっかけとなり、中国や韓国の主張を受け入れて日本の近現代史をことさら悪く描く自虐史観への批判が噴出。同年に新しい歴史教科書をつくる会が発足するなど、教科書改善の動きが強まった。

 安倍晋三首相や萩生田光一文部科学相は自虐史観からの脱却に力を尽くした政治家だ。実際、安倍政権のもとで検定基準が改められ、政府見解を反映した記述などを求める項目が追加された。その結果、島根県の竹島や沖縄県の尖閣諸島などについて全社が「固有の領土」と明記するようになった。

 なぜ改善の流れに逆行し、自虐史観が息を吹き返したのか。検定には静謐(せいひつ)な環境が求められ、大学教授らでつくる検定調査審議会が「密室」で審議する。審議会は文科相の諮問機関だが、専門性が高く、審議に入ると政治の意向などは入り込む余地がない。

 検定意見を詳細にみると、字句などの細かな間違い探しに終始し、自国をおとしめる記述が複数見過ごされている。教科書に間違いは許されず、細部まで字句の誤りを正すことは必要だが、「木を見て森を見ず」になってはならない。

 「従軍慰安婦」の呼称が復活した今、検定制度のあり方について問い直す必要があるだろう。(川瀬弘至)

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