新型コロナウイルス 子供の症例少ない?

 新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、幼い子供を抱える保護者らに不安が広がっている。日本小児科学会は2月28日、子供に関する注意点をまとめた「Q&A」を更新、受診の目安などを例示し、冷静な対応を呼びかける。政府が全国一斉休校の方針を示す中、子供の患者は少なく、感染しても重症化しにくいとの見方もある。実際はどうなのか。(有年由貴子)

 ■重症化ほぼなし

 「現時点では国内の小児患者は稀(まれ)で、成人の感染者からの伝播(でんぱ)によるもの」。国内での感染拡大を受け、日本小児科学会が更新したQ&Aの一部だ。

 Q&Aは「情報が少なく、分からない点が多い」としつつ、中国や国内の状況を踏まえ、子供は「家庭内において感染している例が多く、発熱、乾いたせき、倦怠(けんたい)感を訴える一方、鼻汁や鼻づまりなどの上気道症状は比較的少ないようだ」と分析している。

 また、厚生労働省が感染を疑う目安として示した「37・5度以上の発熱が4日以上」の基準については、「小児の『風邪』の多くが当てはまってしまう」と指摘。原因不明の発熱が続く▽呼吸が苦しい▽経口摂取ができない-などの様子が見られた場合に速やかに医療機関を受診するようすすめている。

 厚生労働省によると、2月28日現在の国内で感染したことが判明している180人のうち、19歳以下の感染者は5人、10歳未満は3人となっている。

 中国のチームによる感染者約4万人の分析によると、19歳以下の新型肺炎患者は全体の2・1%。致死率も全体の2・3%に対し、10代は0・2%で、9歳以下の死者はいない。

 こうした状況を受け、小児科学会も「小児患者が重症化したという報告は稀」との見解を示している。

 ■大人と子供の違い

 なぜ、子供の症例が少ないのか。

 新潟大大学院の斎藤玲子教授(公衆衛生・ウイルス学)は「原因ははっきりとは分からない。ただ、新型に関して子供には感染しにくい何らかのメカニズムがあるのだろう」と話す。

 新型は、人間の肺胞などの細胞表面にある「ACE2」というタンパク質を使って感染することが分かっている。この機構は同じコロナウイルスである重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスと共通で、SARS流行時にも小児患者は少なく、発症しても比較的軽症だった。

 斎藤教授は「このタンパク質の機能なり分布が、大人と子供で異なっているのではないか」と推測する。

 一方、「子供たちは一定の確率で感染を起こしているが、他の感染症と見分けがつかずに見過ごされている可能性もある」とみるのは、小児科医で公衆衛生学が専門の高橋謙造・帝京大大学院教授だ。

 一般に、ウイルスに感染すると人間の体内で抗体が作られ、次に同じウイルスが体内に侵入した際の抵抗力となる。これが「免疫」と呼ばれる防御機構だ。ほとんどの人は幼少期に「水疱瘡(みずぼうそう)」や「おたふくかぜ」などのウイルスに感染することで免疫の記憶を体に刻み込んでいく。

 これに対し、子供はあらゆるウイルスに初めてさらされることになり、感染症にかかりやすい。このため、「子供は普段からさまざまなウイルスにさらされ、常時『臨戦態勢』にある。免疫のスイッチの入り方が大人よりも早く、軽症で済むケースが多いのかもしれない」と分析する。

 ただ高橋教授は、新型の感染拡大の裏で、風邪の原因の一つで比較的重症化しやすいアデノウイルス感染症やインフルエンザなどが流行している地域があるとも指摘。「少しの発熱程度で感染を疑い、やみくもに医療機関に連れて行く方が健康へのリスクが高い」と冷静な対応を呼び掛ける。

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