AI、ビッグデータを駆使した新治療! 新システムで約6万件のデータベースを構築

 【IoT活用で変わる糖尿病治療】

 2型糖尿病に対し、スマートフォンのアプリに、体重や血圧、活動量、あるいは、食事内容のデータを転送し、医師、保健師、管理栄養士のアドバイスが得られるIoT(モノのインターネット)の研究が進行中だ。さらに、ビッグデータやAIなどを組み合わせると新たな発展が期待できる。

 「医師の知らないところで患者さんはどのように食生活改善に取り組んでいるのか、を医師は知りたい。反対に、患者さんは診断や検査など電子カルテに何が書かれているのか知りたいでしょう。IoTや電子カルテを組み合わせることは、双方にメリットがあるのです」

 こう話すのは、国立国際医療研究センター研究所糖尿病研究センターの植木浩二郎センター長。糖尿病のIoT研究代表や、日本糖尿病学会と国立国際医療研究センターの共同研究「診療録直結型全国糖尿病データベース事業(J-DREAMS)」の代表も務めている。

 J-DREAMSでは、電子カルテに「糖尿病標準診療テンプレート」と呼ばれる入力画面を作り、参加医療機関の医師が、患者を診察したときに入力する仕組みを進めている。情報は匿名化した後に収集してデータベースを構築。この情報には、診断、検査、投薬、患者の体重、合併症を起こした時期なども含まれる。

 「私たちが知りたいのは、検査データや処方内容、患者さんの体重、合併症率などの身体状態です。しかし、従来の大規模データベースにそれら全てがそろっているものはありませんでした。そのため、新たなシステムを作り、2015年に開始し、現在54施設、約5万9000例のデータベースが構築されています」

 これに先駆けて、06年~09年の3年間、2540人を対象にした「糖尿病合併症を抑制するための介入試験(J-DOIT3)」が実施された。 (1)血糖、血圧、脂質の治療を従来通りの目標で治療する群、(2)より厳格な目標の強化療法の群-に分け、糖尿病合併症の起こり方を調べた研究で、(2)の強化療法での合併症の発症率が抑えられていたことが分かった。そして、強化療法も、従来の治療と同じように比較的安全に治療ができることがこの研究で明らかになった。この成果を「J-DREAMS」のデータベースと組み合わせ、患者の身体状態と治療法などのパターンをAI(人工知能)で解析させることができれば、治療に関して質の高い自動ガイダンスが誕生する。糖尿病専門医以外のクリニックの医師でも、患者の状態に合わせた2型糖尿病治療が行いやすくなる。

 「自動ガイダンスによるかかりつけ医の先生方のサポートは、医療の質を高めることにつながります。同時に、IoTの研究も進行することで、将来的には、患者さんのヘルスレコードと電子カルテを結びつけたい。そうあるべきだと考えています」

 ただし、国内では電子カルテの仕様がバラバラで統合されておらず、患者の側はスマートフォンを持っていない人が高齢者に特に多い。データベース構築やIoT活用には、まだ高い壁が幾つも立ち塞がっている。山積する課題を克服すべく、植木医師らは奮闘している。(安達純子)

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