歴史には「裏面」にこそドラマがある 「狂乱と熱狂に包まれた昭和の空気感を今に伝えたい」 五木寛之さん『新青春の門第九部漂流篇』

 誰もが一度くらい読んだり、映画を見たりしたであろう大河小説。スタートから半世紀を経て新刊(第九部)が出た。青春の甘酸っぱくも苦い思い出をかみ締めながら、伊吹信介の行く末に願いを重ねるのもいい。(文・南勇樹 写真・酒巻俊介)

 --本作は、ロシア革命後に消えたロマノフ王朝の財宝がキーワード

 「年を取ると、歴史や時代への関心が出てきます。ロマノフ王朝の隠し財産も関心事のひとつでした。日本と極東との関係で、シベリア出兵や満州国の成立なども絡んでくる。歴史の正史ではなく、裏面史にこそドラマがある。それを書きたいと思いました」

 --雑誌連載では次の第十部が始まっている。プロローグの舞台は1962年春の新宿

 「50年前は(同時代的な)『現代小説』でも、今や『時代小説』(苦笑)。60年代は今の読者にとって過去の歴史となりました。でも小説家は風俗を書くべきだと思います。60年代は僕の青春期で、狂乱と熱狂に包まれた面白い時代でした。記録だけでなく、とどめておきたい記憶や気持ち、昭和の時代の空気感のようなものを今に伝えたいのです」

 --「青春の門」は連載開始から今年で50年です。改めて自身にとってどんな作品ですか

 「半世紀も続いているというだけで奇跡のようですね。書く機会が与えられ、僕の体力も続いた。ライフワークというと大げさで、自分が生涯かけて書いてきた、というよりも、(読者など)後ろからの風圧を背中で感じながら書かされてきた感じがあります。まさに『他力』ですね」

 --シリーズ累計約2200万部はすごい

 「九州人は短気で飽きっぽいといわれますが、僕の中では『持続すること』が大事。長く続けること、それだけで意味があると思っています」

 --九部は23年間の中断を経ての再開でした

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