「デジタル教科書」解禁から半年 普及が進まない理由とは

「ちょっと結晶格子をみてみようか」

 一足先に平成25年からデジタル教科書を導入している大阪府東大阪市の近畿大学付属高校の化学の授業。乾武司教諭(56)が指示すると、生徒たちは端末に内蔵された副教材を開いた。規則的に並んだ結晶構造の立体的な図が映し出され、「回転開始」のボタンを押すと図がゆっくりと回る。紙では確認できない裏側の粒子の様子も表示されていた。

 乾教諭は「これまでは黒板に絵を描くなどして生徒の理解を促してきたが、デジタル教科書のほうが、生徒もイメージをつかみやすいようだ」と話す。「情報量も多く、便利なので授業以外でも柔軟に使うようになった」という。

費用面のハードル

 児童生徒が使う学習者用デジタル教科書の導入について、国は昨年、正式な教科書と位置づける学校教育法を改正。これまでは授業で紙の教科書を使用することを義務づけていたが、今年4月以降、小中学校で解禁され、半年が経過した。

 大阪府内の私立中学で社会を教える男性教諭(23)も「普段の授業では教科書に加え、副教材やプリントを使っているがデジタルは格段に情報量が多い」と導入に意欲を見せる。

 ただし実際に使うには児童生徒が1人1台ずつタブレットなどを持つことが前提になる。無償で提供される紙の教科書とは異なり、端末やデジタル教科書を使うための「アカウント」も購入する必要がある。自治体は予算をつけなければならないため、導入のハードルは高くなる。

 タブレットの配布などICT(情報通信技術)教育に力を注ぐ大阪府箕面市の担当者は「公立では費用面でかなりのハードルがある。まずは教諭が電子黒板などと一緒に使用する『指導者用デジタル教科書』の普及の必要もあり、児童たちが使う学習者用の検討は少し先の話になるだろう」と話す。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ