見えぬ全世代型保障 論点整理 医師会が負担増反発

 政府は26日、全世代型社会保障検討会議の第4回会合を首相官邸で開き、12月中旬の中間報告に向けた論点を提示した。最大の難関は医療制度改革で、利害関係者との調整が難航している。年金改革でも一定以上の収入がある高齢者の年金を減らす在職老齢年金制度の見直しが頓挫。鳴り物入りで始まった全世代型社会保障制度の改革論議は一進一退を繰り返すばかりか、社会保障のあるべき姿が見えてこない。(坂井広志)

 検討会議で示された論点のテーマは(1)年金(2)労働(3)医療(4)予防・介護-の4つ。安倍晋三首相は「人生100年時代の到来を踏まえて働き方を含めた改革をパッケージとして行っていく」と強調した。「医療などの分野を含めて、年末の中間報告や来年夏の最終報告に向けて具体的な調整を進めていく必要がある」とも語った。

 ただ、前途は多難だ。医療改革の焦点の一つに、外来で受診した人の窓口負担に一定額を上乗せする受診時定額負担の導入がある。「現役世代の保険料負担を軽減しつつ、高額な医療費を保険で支えるには、広く少額の負担を分かち合うべきだ」との考えのもと財務省が主導している。

 日本医師会はこれに待ったをかけている。横倉義武会長は24日、東京都内での講演で「財政論でしかない。容認できない。医療費の上昇分を患者の負担で賄う仕組みを入れることがあってはならない。公的医療保険は相互に助け合うのが基本理念だ」と強調した。自己負担は最大3割という原則を死守するため、妥協の余地はない。

 自民党の議員連盟「国民医療を守る議員の会」は26日、国会内で総会を開き、受診時定額負担について「絶対に導入しないこと」を求める決議を採択した。総会には国会議員約160人が出席した。

 後期高齢者の医療機関での自己負担を現行の原則1割から2割に引き上げる案には、医師会は低所得者への配慮を求めており、柔軟姿勢をみせている。

 一方の年金改革。65歳以上の在職老齢年金については、月収の減額基準を見直さず、現行の「47万円超」を維持する方針を固めた。政府は当初、減額基準を引き上げることで、高齢者の就労意欲を促進させることを考えた。高齢者にも社会保障制度の担い手になってもらうためだ。

 だが与野党から「高所得者優遇」批判が続出した。高齢者により多く年金を支払うことで将来世代への影響を懸念する声もあり、政府は深追いを避けた。

 年金改革のもう一つの焦点であるパートなどの短時間労働者への厚生年金の適用拡大をめぐる議論の行方も順風満帆とはいえない。

 年金財政を強化するのが狙いで、方向性では与党内に異論はほとんどない。しかし、保険料は労使折半だ。現行の企業規模要件である「従業員501人以上」を「50人超」に引き下げる案が表面化すると、中小企業は反発した。最終的に「100人超」を経て、段階的に引き下げる案に落ち着きそうだ。

 年金改革で円滑に決定しそうなのは、公的年金の受給開始時期(原則65歳)の柔軟化くらいだ。60~70歳の間で選べる現行制度の上限を75歳に引き上げる変更で、選択制である以上、反発は起きようがない。

 さまざまな制度改正案に利害関係者が反発する光景に、政府側は強気で推し進めるのが困難になってきている。論点ペーパーには、政府内で議論している介護保険サービスの利用者負担増の記載がなかった。「ケアプラン」(介護計画)の有料化はすでに先送りの方向で調整している。

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