大阪・あいりんの密造酒秘話がヒント「西成暴動ビール」

 大阪・西成で愛されるクラフトビールがある。あいりん地区でかつて起きた日雇い労働者らによる暴動にちなんだ、その名も「西成ライオット(暴動)エール」。密造酒が同地区で出回った逸話をヒントに、介護福祉事業会社が障害者の就労先としてビール事業に乗り出すと、商品名もあいまって全国的な人気に。来年度末には第2醸造所の稼働も予定しており、新たな雇用創出を見込んでいる。(吉国在)

 機動隊と日雇い労働者が対峙(たいじ)する情景を思わせるイラストを描いたラベル。1本600円(税抜き、330ミリリットル)で販売されている。

 介護福祉事業を営む「シクロ」(大阪市西成区)が、あいりん地区近くに構えた醸造所「ディレイラ・ブリュー・ワークス」(同区)では、就労者が瓶のラベル貼りや箱詰め、配送作業に汗を流す。

 生まれつき脳性麻痺(まひ)で身体障害がある同市住之江区、上園広海(ひろうみ)さん(64)は「張り合いのある仕事の後のビールは格別やで」と顔をほころばせる。

 構想が持ち上がったのは2年半前。就労者のなかには、酒好きで同地区で日雇い労働者だった人もおり、同地区でかつて、密造酒がくみ交わされていたという話が話題に上ることも。

 「西成に長年住む俺らは酒のことなら誰よりも詳しい」「ビールを造るんやったらなんぼでも売ったる」と語る就労者に対し、山崎昌宣(あきのり)代表(43)は「働くことにやる気をもってもらえれば」とビール事業への参入を決めた。

 平成29年11月に就労者らと試作を開始。酒造免許取得後の翌年4月には、醸造所を新設し、仕込みと試飲を重ね、飲みやすさにこだわった芳醇(芳醇)なコクとフルーティーな香りが特徴の西成ライオットエールが完成した。

 これまでにライオットエールを含む計30種類を醸造。すべて地元にちなんだコンセプトや、開発に至った架空のサイドストーリーを設定し、このうち2銘柄は国内ビールの審査会でそれぞれ銀賞を獲得した。

 今では取り扱い店舗は全国に広がる。ビール醸造に携わった就労者の数は延べ約160人に上り、一般就労に結びついた人もいる。

 だが、現在の設備では月数キロリットルしか生産できないため、注文に対応できず、利益を生み出せていないのが現状だ。このため、近くに第2醸造所を整備し、令和3年3月までに稼働を予定。缶ビールの製造機も導入し、生産量を現在の5~6倍に増やすほか、新たに障害者約40人の雇用を創出する計画だ。

 山崎代表は「西成で(ビール原料の)ホップを栽培する構想も進んでいる。みんなで地元ならではのビールを造り、かつてのような熱気を巻き起こしたい」と意気込んでいる。

 ビールは、醸造所近くの直営店「アビタイユモン」で購入可能。問い合わせは醸造所(06・6575・9067)。

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