作家・眉村卓さん 「書くこと」にこだわり続け

 祭壇の両横に並ぶ作家や出版社などの供花約70基から、日本のSF小説の黎明(れいめい)期を支えた功績がしのばれた。ひつぎの隣には、行きつけの喫茶店で好んだ「オムカレー」と「イタリアンスパゲティ」。大作家ながら飾らない人柄が慕われ、葬儀にはファンや出版関係者ら約250人が参列した。

 作家の浅田次郎さん(67)は、SF小説は常識を超えた壮大な面白さで物語の組み方を変えたといい、「多くの作家が影響を受けた。一時代を画した偉大な方だった」とたたえた。眉村さんの作品には「現実離れした物語の中にも、人間愛があふれていた」と語ったのは作家の難波利三さん(83)。作家の有栖川有栖さん(60)は「SFの世界が現実世界と地続きであることを表現された。僕らの世代のスターの一人だった」と惜しんだ。

 眉村さんは「書くこと」の喜びと厳しさを広く伝えることにも尽くした。カルチャー教室で指導を受けた神戸市の主婦、松本美加さん(46)は「訴えたいことをはっきりさせてと、心に迫る言葉で熱心に指導してくださった。教室からプロの作家が出ることが夢だと話されていました」。

 優しさをたたえて静かにほほ笑む遺影は、9月に撮影された。50年以上の親交があるイラストレーターの成瀬國晴さん(83)は「穏やかで、いつもはにかみながら物を言う人だった」と声を詰まらせた。

 ひつぎには原稿用紙と3Bの鉛筆。長女の知子さんは喪主の挨拶でこう語った。「父はずっと書く人だった。たぶん、次の世界でも書いているのでしょう」

 3日、誤嚥(ごえん)性肺炎のため死去。享年85。

 =9日、大阪市立葬祭場 やすらぎ天空館

 (藤井沙織、横山由紀子)

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