饗宴の儀にクワイ献上、駒崎昌紀さん「役に立てて幸せ」

 天皇陛下のご即位を祝い、外国元首らを招待した22日の祝宴「饗宴(きょうえん)の儀」の料理に、埼玉県草加市で農業を営む駒崎昌紀さん(78)が真心を込めて育てたクワイが使われた。献上したクワイは揚げ物として提供され、駒崎さんは「役に立てて幸せだ」と笑みを浮かべた。

 クワイは茎の先に芽が見えることから「芽出たい」として、昔から縁起物としてお祝いの席で振る舞われてきた。ただ、「通常はお正月で使うのに、10月に食べると聞いて驚いた。この時期に大きなクワイを作ったこともなかった」という。

 饗宴の儀用として献上の依頼があったのは9月5日。駒崎さんのもとに古くから付き合いがある取引先の東京シティ青果の担当者から連絡があった。10月14日に納入予定と伝えられ、駒崎さんは「とにかく、期間が短く、大丈夫だろうかと思った」と振り返る。

 クワイはお正月のおせち料理に使われ、収穫のピークは通常、11~12月だが、駒崎さんのクワイは全国でも珍しく、10月から出荷している。「おそらく、そのことを知っていたので依頼が来たのかもしれない」と話す。

 オモダカ科のクワイは水田で栽培されている。泥の中の茎から枝が分かれ、その先にくちばし状の芽を持つ塊茎(かいけい=クワイ)があり、食用にされている。1つの株から10~15個ほどの塊茎が収穫できる。日本では青色のクワイが主流で、広島県福山市や埼玉県越谷市などで栽培が盛んだ。

 駒崎さんは長年、草加市の綾瀬川近くの水田で青色のクワイを栽培している。先祖は江戸時代初期から農家で、自宅に残る記帳によると、明治時代からクワイの栽培を始めたとされる。

 東京シティ青果の担当者からの依頼は、皮を含めた大きさが直径5センチ、中身が直径2・8センチのクワイの献上だった。通常は皮を含めて3~4センチ程度で「10月の段階で、5センチのクワイは、なかなか採れない」と駒崎さん。5センチのクワイが収穫できるのは通常、11月中旬だという。

 クワイを育てるのに重要なのが水の温度調整だ。駒崎さんは地下水をうまく活用することで、クワイの生育を1カ月早めた。毎日、朝、昼、夜の3回、水田をチェックし、クワイの成長具合を丹念に確かめた。12日にサンプルを提出し、合格をもらい、14日に530個を納品した。

 しかし、東京シティ青果を通じて納品した京都の加工会社から「まだ熟していないものがある」との指摘を受けた。クワイは青色になると完熟し、ピンク色だと熟していない状態だという。駒崎さんは「1週間で大きく状態が変わるため、納品が難しかった」と語る。

 そして、17日に追加で550個を納品。22日の饗宴の儀では、駒崎さんのクワイが揚げ物として、164の国と機関の約400人の賓客に振る舞われた。しっかりと依頼に応え、大役を果たした駒崎さんはこう振り返る。「献上するのは名誉なことだが、責任重大。納品して安堵感があった」

 最近はクワイを知らない若者も少なくなく「饗宴の儀を契機に多くの人に知ってもらいたい」と駒崎さん。今回の献上で、駒崎さんが出荷するクワイの箱には「即位の礼 献上くわい」の文字を記すことができるという。

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