車いすのままカットやシャンプー 広がるバリアフリー美容室

 しゃれた空間で、装いと気分を一新してくれる美容室。だが、シャンプーやカット、カラーリングのたびに場所の移動を強いられるのは、車いす利用者ら体の不自由な人や高齢者にとって負担を伴う。そんな中、奈良市の美容室「sfida(スフィーダ)」は、全ての人が利用しやすいユニバーサルデザイン(UD)をコンセプトに掲げ、評判を呼んでいる。(石橋明日佳)

 店内は広々とした空間設計。入り口に段差はなく、スタッフは一様に弱者の視点に立った細やかなサポートを習得している。副店長の田代明莉さん(28)は「お客さまに合わせた接客を心がけています。誰もがおしゃれを楽しんでくれたら」と話す。

 同店は平成26年、障害者や高齢者が気軽に利用できる県内初の「ユニバーサルサロン」としてオープン。車いすのまま施術を受けられる美容室が他にはなく、「段差があったり、通路が狭かったりすると来店しにくい」という利用者の声を店内の設計に反映した。

 廊下は幅にゆとりを持たせ、スタイリング剤などを載せたカートも移動の邪魔にならない。受付カウンターのほか、カットやカラーリングをするセット面のテーブルも、一般的な車いすに合わせて低い位置に設計。座ったまま移動できる施術用の車いすも完備し、至る所で利用者の負担を軽減している。

 さらにハード面に加え、ソフト面でもバリアフリーに配慮。美容師やアイリストら10人のスタッフ全員が、障害者や高齢者への接し方を学ぶ「ユニバーサルマナー検定3級」を取得済みだ。

 インターネットの口コミなどで評判が広がり、これまでに約15人の車いすユーザーが来店し、視覚・聴覚障害者の利用も増えている。田代さんは「美容を通じ、お客さまが元気になるきっかけ作りができれば」と力を込める。

 高齢者や障害者の被服に詳しい山野美容芸術短期大学(東京都八王子市)の大野淑子教授(被服構成学)によると、近年は訪問理美容の増加とともに、バリアフリーの美容室のニーズが増えているという。

 大野教授は「障害者や高齢者の多くは、衣食住のうち『衣』を後回しにしがちだが、身だしなみや装いを整えれば生活の質を効果的に上げることができる」と指摘。バリアフリーの美容室が広がりつつある現状について、「おしゃれを楽しめば『外に出たい』『交流したい』という気持ちになる。美容が社会とのつながりを生むきっかけになるのが望ましい」と話している。

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