iPS角膜移植「5年で一般的な治療に」 大阪大会見詳報

 大阪大の西田幸二教授は29日、大阪府吹田市の同大で記者会見を開き、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った目の角膜の細胞を患者に移植する世界初の手術について説明した。主なやり取りは以下の通り。

 --臨床研究で行った手術の概要は

 「40歳代の女性に実施して無事に終了した。両目の視力がほとんどないが、今回は左目に角膜細胞シートを移植した。先週退院し、日常生活を送っている。経過は今のところ問題ない。現時点ではうまくいっていると理解している」

 --視力の回復は

 「移植した角膜シートはきれいについて機能しており、視力はかなり改善している。患者さんは『見えるようになった』と喜んでいた。計測した視力の値からすると、普通に新聞や本を読める状態とみられる」

 --臨床研究は成功ということか

 「安全性と有効性を、これから1年間かけて慎重に確認しなければならない。また、白濁した患部を除去して透明な角膜細胞シートを移植したのだから、見えるようになったのは予想通り。問題は、この状態をどれだけ維持できるかだ」

 --角膜上皮幹細胞疲弊症を選んだ理由は

 「角膜の病気で、既存の治療法では治しにくく最も重い部類だからだ。iPS細胞による再生医療という新しい臨床研究は、難治性の病気を扱うべきだと考えた。将来は他の角膜の病気の治療にも応用したい」

 --臨床研究を実施したことへの感慨は

 「iPS細胞による再生医療の研究を始めて13年。こんなに時間がたったのかという思いだ。患者さんに応用するため、強固な基礎研究を築いてきたので、自信を持って臨めた」

 --死者などから提供された角膜を使う従来の移植と比べて長所は

 「従来の方法でも、手術直後はいったん視力が回復するが、あまり長くは保たず、拒絶反応などが1年以内に起きてはがれてしまうことが多い。だが、事前のサルを使った実験などで、iPS細胞由来の角膜細胞の場合は拒絶が起きにくいというデータがある。高品質な角膜の安定的な供給で、世界的な提供者不足の解消に貢献できる」

 --今後の計画は

 「年内に2例目の手術を行う。実施対象の患者もほぼ決まっている。来年の半ばぐらいにもう1例、その2~3カ月後に最後の4例目を実施する。再来年の春ごろに、臨床研究全体の評価まで終わるだろう」

 --一般的な治療法としての実用化は

 「臨床研究の計4例で安全性と有効性を確認できれば、次の(保険医療として適切か評価する)治験段階に進める。今後5年程度で一般的な治療に発展させていきたいと思っている」

 --コストはどうか

 「費用は300万~400万円を目指している。手術を受ける人の数が増えれば、角膜細胞シートのコストが下がるため、もっと安くできる可能性もある」

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