カフェイン依存…市販薬乱用の危険な実態! 咳止めや鎮痛薬にも

 カフェイン含有量が多く、甘くて飲みやすいエナジードリンク。前回は、これが入り口となり、眠気防止薬として市販されているカフェインの錠剤の乱用につながる可能性が極めて高いという話をした。今回は、カフェインの依存性について、あるいは、どんな人がカフェインに頼りやすいのかを説明したい。

 薬物依存症の専門家で、国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部の松本俊彦部長によると、実際に患者を診ている限りでは、カフェイン単独の依存症患者はいないという。しかし、「カフェインが依存症の形成に関係しているのではないか、と疑われる人は確実にいます」。現在、市販薬の乱用は見過ごせなくなっている状況だという。とくに10代の若い層に多いそうだ。そして、乱用される市販薬に共通して含まれているのがカフェインだ。

 たとえば、最も乱用される市販薬は、咳止め薬の「ブロン」。リン酸ジヒドロコデイン(鎮痛作用)と塩酸メチルエフェドリン(覚醒作用)などの作用を目的に乱用されるが、さらに錠剤にはカフェインが1錠に90ミリグラム含まれている。ブロンには液体と錠剤があるが、もともと液体を飲んでいた人が、乱用が進行してくると錠剤に移行するのは、エナジードリンクとカフェインの錠剤の関係と同様だ。

 また、多くの鎮痛薬にもカフェインが含まれている。たとえば「イブA錠」の1錠のカフェイン含有量は80ミリグラム。「ロキソニンSプレミアム」は50ミリグラムだ。ちなみに、コーヒー1杯中の含有量は40~90ミリグラムだ。

 「なぜ風邪薬、鎮痛薬の中にカフェインが入っている必要があるのかということを、われわれは考えなければいけません。症状が治まっても、カフェインがあるからなんとなく続けてしまいそうな気がしませんか?」

 カフェインは、鎮痛薬の効果を強めながら副作用を抑えたり、少量の有効成分でも鎮痛効果を出したりするために含有される、といった理由があるそうだ。しかし乱用のきっかけになっている可能性が高いのなら、考える必要があるだろう。

 松本部長はまた、同じ薬物の乱用者でも、覚醒剤や大麻といった違法ドラッグと市販薬では、タイプが違うという。

 「覚醒剤や大麻などの違法ドラッグ常用者は、依存症の人が圧倒的に多い。市販薬は依存症の人もいますが、そこまでではない人が多い。市販薬の乱用者が増えている理由は、ときどき嫌なことがあったときにそれを忘れたくて過量服薬する、というパターンの人が多いと推測されます」

 東京都監察医務院の鈴木秀人医師らの研究グループが日本中毒学会で発表した内容によると、2014~18年の東京都23区内で発生したカフェイン中毒死19例のうち、約7割に精神科の通院歴があったという。松本部長も市販薬の乱用者には、神経症性障害、不安障害、身体表現性障害などの精神疾患や、パーソナリティー障害、発達障害などを合併している人たちが非常に多いと話す。

 「生きづらさを抱える人たちが、生きづらさをなんとか緩和しようとして市販薬を使っている可能性があります。カフェインの錠剤も、本人が求めるパフォーマンスに追いつかないときに大量に摂取して、目の前の問題をなんとかしてしまった経験から、乱用に至ってしまうこともあります」

 カフェインに頼ることの危険性を、そして生きづらさを抱えている人やそのような状態の人に手を差し伸べることの大切さをぜひ覚えておきたい。(医療ジャーナリスト 石井悦子)

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