スマホで注文「モバイルオーダー」 軽減税率対象の「テークアウト」増加に期待

 【近ごろ都に流行るもの】

 10月1日の消費税率引き上げまで2カ月を切った。飲食店では税率が10%に上がる「イートイン」に対して、8%に据え置かれる軽減税率対象の「テークアウト」需要の増加が見込めることから、効率化を図る集客策として「モバイルオーダー」の導入が増えている。スマートフォンから事前に注文した客は、指定時間か調理完了時間に来店すれば待ち時間なしで商品をピックアップできる仕組みで、国のキャッシュレス対応促進も追い風となっている。この夏、スターバックスコーヒーなど大手の開始が話題となる一方、まちの食堂にも広がっている。(重松明子)

 都営地下鉄三田線白山駅(東京都文京区)から徒歩5分ほど。昭和の風景が残る商店街に豚丼専門店「どんぶり豚三(ぶたさん)」がある。戸を開けると、店主の李龍大(リ・リョンデ)さん(48)が2つの鉄のフライパンと格闘中。火柱とともに肉汁の香ばしさが広がるなか、タブレットが「リンリン」と鳴った。

 モバイルオーダーから注文のお知らせだ。「ランチ以外の時間帯は1人なので助かる。以前から持ち帰り注文を電話で受けていたが、両手がふさがっているとき受話器に手を伸ばそうと必死でした」と苦笑した。在日韓国人3世。焼き肉店を営んでいた亡き伯母から受け継いだタレに、千葉県産「野田さくらポーク」を漬け込んだ自慢の味。注文を受けてから強火で一気に焼くスタイルで、1日60~100杯の豚丼(600円~)を提供している。

 モバイルオーダーは6月末に導入した。「仕事帰りに家族の夕食として注文するママさんや大学院生など、近所の若い層にも活用していただけるようになった。ポイントが付くので電話から切り替える常連客も多い。洗い物が出ないのもテークアウトのありがたさ」。気さくな接客で懐かしいムードを醸し出している李さんは、「これからはアナログとデジタルの良さを融和させていく時代ですね」。(豚三は11~15日のお盆は休業)

 李さんが利用しているのは、「ショーケース・ギグ」(東京都港区)が開発したモバイルオーダープラットフォーム「O:der(オーダー)」のアプリ版。料金は非公表だが、初期費用+月額制で資本力の小さな店でも比較的手軽に始められるという。

 同社によると、今年6月の新規契約店舗が前月の4倍に急増。6月に経済産業省や中小企業庁が全国8会場で開いた「軽減税率・キャッシュレス対応推進フェア」の影響もあるとみており、から揚げ店、餃子店など約1500店舗が導入。首都圏から地方にも広がっている。

 広報担当者は「CRM(顧客情報管理)で、ユーザーにクーポン配信やキャンペーンの通知ができ、蓄積データを販促マーケティングに活用できることも店舗側のメリットになります」とアピールしていた。

 総菜店「RF1(アールエフワン)」(全国150店舗)を展開するロック・フィールドでは、東京メトロ溜池山王駅直結のオフィスビルにある「RF1セレクト 山王パークタワー店」(東京都千代田区)で、5月からモバイルオーダーを始めた。

 1日の集客が500人以上あり、昼時に一極集中。レジ待ちの行列を見て立ち去る客の取り逃がしが課題だったが、導入後は専用窓口を設けて素早くピックアップできる態勢を整えている。

 サラダ中心のメニューで客の8割が女性。だが、モバイルオーダー登録者の男性比率は半数に達する。「食べたいと思っても、女性の列に並ぶのは恥ずかしいと避けていたサラリーマン層を取り込めた。私も気持ちがわかります」と業態開発部の出口亮太部長代理(39)。温めや包装の段取りにもゆとりができ、店員の負担軽減にもつながっているという。

 軽減税率効果でテークアウトが増えるとなると、どこで食べる? という新たな問題も出てきそうだ。自宅に持ち帰るケースばかりでなく、食べ歩きが増えたりして…。タピオカドリンクのゴミ公害とも重なるが、マナー意識の向上や公共飲食スペースの整備も必要になってくるのかもしれない。

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