「そもそも何をすれば…」プログラミング教育に黄信号、準備の遅れ深刻

 来年度から小学校で必修化される「プログラミング教育」の円滑な実施に黄信号が点灯している。文部科学省が行った調査では全国の教育委員会の5割以上が基本的な内容を理解していないことが判明。学校現場でも「そもそも何をすべきか分からない」と困惑の声が広がっている。全面実施まで残り1年を切る中、教員研修や先行授業など、準備の本格化が急がれる。(福田涼太郎)

 ■機運高まらず

 プログラミング教育は、コンピューターを指示通りに動かす体験を通じて論理的な思考力を育むのが狙いだ。文科省では、パソコン上に描かれたネコとネズミを動かすプログラムや、パソコン上のタマゴに触ると割れてひよこが出てくるプログラムの作成などを、授業の実践例に挙げている。

 だが、文科省が今年2~3月、小学校を所管する全国1745教委を対象に準備の進み具合や課題について聞いたところ、全体の51・7%が「そもそも何から手をつけたらよいのか分からない」「どのような支援が必要か分からない」など、理解不足からくる課題を抱えることが判明した。

 学校現場の悩みはさらに深刻だ。青森県弘前市の公立小で情報教育担当を務める男性教諭(45)は、「学力向上など優先してやらなければならないことがある。(どの教員も)目の前の仕事で手が回らず、機運が高まっていない」と困惑気味。栃木県真岡(もおか)市の公立小の男性教諭(39)も、具体的な計画が全く進んでいないことを認めた上で、「このままではプログラミング教育をスタートできたとしても、しっかりとした授業を子供たちに提供できるか不安だ」と打ち明ける。

 ■予算不足で遅れ

 プログラミング教育の準備では、規模が大きい市教委や特別区教委に比べて、規模の小さい町・村教委で遅れが目立っている。

 文科省の調査では、平成30年度に先行授業を実施した割合は市区教委が71・5%だったのに対し、町村教委などでは31・9%にとどまった。理由の一つが予算不足だ。

 大阪府で人口が最も少ない(5207人、今年5月末現在)千早赤阪村。プログラミング教育に必要なタブレットなどの機器をそろえるため、今年度の関連予算として約5500万円を計上した。「小さな自治体にとっては高額な出費で大変だが、来年度から始まるので先延ばしはできない」(村教委担当者)と嘆く。

 ようやく機器の更新にめどがついたが、使用する教材も、それを検討する外部支援員の委託先も未定。担当者は「今夏予定の機器更新作業が終わっていないので、具体的な準備にまだかかれない」と話し、先行授業が実施できない理由は機器更新の遅れが主な要因だと強調した。

 ■「恵まれて」先行

 一方、先行授業などを積極的に進めている教委もある。

 東京都文京区の公立小では、今年1月に行われた公開授業で、グループに分かれた児童がロボットを組み立ててパソコンとつなぎ、動かすプログラムをつくった。

 区教委の担当者によれば、区内の小学校では授業に必要な機器はすでにそろっており、教員らに指導方法などを教える外部支援員も各校に週1回のペースで訪れているという。保護者の意識も高いといい、「他の自治体より恵まれている」と担当者は話す。

 文科省では、こうした先行授業を参考にしつつ、準備の遅れている自治体への支援を積極的に進める方針だ。同省ホームページで授業教材や教員研修教材を提供するほか、今年9月を「プログラミング教育推進月間」に設定。民間企業と連携した取り組みも進めていくことにしている。

     ◇

 ■小学校のプログラミング教育 コンピューターを指示通り動かせることを体験しながら、論理的思考力を身に付ける教育。身の回りの機械や社会システムが、プログラム(計画)を通して人間の意図通り動くことに気付かせる。プログラミングは、コンピューターが理解できる言語(プログラミング言語)を使ってプログラムを作成し、指示を出す行為。社会で人工知能(AI)の役割が拡大していく中、AIに関する知識を身につける必要があるとして、来年4月から全面実施される小学校の新学習指導要領で必修化された。

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