誤嚥を防ぐとろみ付き飲料自販機、介護施設向けも展開へ

 筋力の衰えなどから、食道に送られるはずの飲食物が気管などに入り込んでしまう「嚥下(えんげ)障害」。死につながる可能性もあるこの障害の対処法の一つとして、飲み物に“とろみ”を付ける方法がある。自動販売機運営管理会社のアペックス(愛知県大府市)は飲料に「とろみ」を加える機能が付いた紙コップ式自動販売機を開発。全国約50カ所に設置を予定しており、10月には施設向けの大型サーバーも展開する予定だ。(吉沢智美)

 現在展開している自販機にはコーヒーや緑茶、抹茶ラテなど多種の味があり、温冷にも対応している。

 自販機の「とろみありボタン」を押すと、とろみを「薄い」「中間」「濃い」と選ぶことができる。とろみを付けないこともでき、どちらでも飲み物の値段は同じだ。

 飲料にとろみを付けてみても味は変わらないが、しっかりと飲み物がのどを通る感覚が分かる。

 コーヒーでも抹茶ラテでも、温かくても冷たくても、3段階のとろみは均一にしている。たとえば、コーヒーではミルクや砂糖の有無によって、とろみ剤の調整の仕方をそれぞれ変えている。

 介護施設などでは、手作業でとろみを付ける作業を行っているケースが多い。

 「飲み物の種類によってとろみ剤の溶ける具合が相当異なる。違いに合わせて(手作業で)きっちりとろみを付けるのは難しい」と日本歯科大口腔(こうくう)リハビリテーション多摩クリニックの菊谷武院長は説明する。

 そのため、介護施設などによっては利用者の飲み物の要望に対応できないほか、利用者全員分の3回の食事と、おやつに付く飲料にとろみをつけるために、職員が1日8時間ほどかけることもあるという。

 アペックスでは10月、施設などで使用できる2リットルの大型サーバーも展開する予定。こちらも要望に合わせて8種類の飲料を準備することができる。

 アペックスの担当者は「災害時でも避難所などにとろみ付き飲料があれば、嚥下障害を持つ高齢者も安心できる」と話し、災害時の活用方法も検討していくとしている。

 飲み込む意識と筋力向上で予防

 嚥下障害のため、気管に飲食物などが入ってしまうことをきっかけに発症する誤嚥性肺炎。厚生労働省の平成30年人口動態統計月報年計によると、誤嚥性肺炎の死因順位は7位となっている。

 東京都健康安全研究センターによると、昭和54年には423人ほどだった誤嚥性肺炎による死者数は平成28年には3万8650人にまで増加。2030年には12万9000人程度にまで急上昇すると予測している。日本歯科大口腔(こうくう)リハビリテーション多摩クリニックの菊谷武院長は「とろみ剤など対応策は普及しているが、それを追い越すほどに高齢者が増えている」とする。

 誤嚥性肺炎の起因となる嚥下障害について、菊谷院長は原因として、気管に蓋をして飲食物の侵入を防ぐ喉頭蓋の「気管に蓋をするタイミングのズレ」「蓋をするための筋力の低下」の2つを挙げる。

 タイミングが合わない場合は「意識して飲み込むことが大切」という。また、上手に飲み込むためには、まず歯できちんと食べ物をかみ砕く必要があるため、歯を磨き大切にすることが第一歩となる。

 筋力が低下している場合は口を最大限に開き、その状態を10秒保持する運動などによって嚥下機能を鍛えることができる。

 菊谷院長は「筋力は30歳をピークに1年で1%低下するといわれている。つまり70歳だと40%も低下していることになる。嚥下機能の衰えは60歳ごろから意識した方がいいだろう」と警鐘を鳴らしている。

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