偶然がきっかけ…「世界最硬」ダイヤは愛媛で生まれた

 「世界一硬い」とされるダイヤモンドが8月9日まで、文部科学省(東京)で展示されている。愛媛大地球深部ダイナミクス研究センター長の入舩徹男(いりふね・てつお)教授(65)が開発したナノ多結晶ダイヤモンド「ヒメダイヤ」だ。天然ダイヤをすりつぶす硬度を誇る。工業利用をはじめとする可能性の広がりに世界中から注目が集まっているが、“世界最硬”のダイヤモンドが生まれたのは偶然がきっかけだったという。

 ■実験は失敗。だが…

 入舩教授は京都大学理学部地球物理学科卒。名古屋大で修士課程、北海道大で博士課程を修了し、1984年から3年間、オーストラリア国立大の地球科学研究所博士研究員として過ごした。

 85年、海底に沈み込む物質・玄武岩が高温高圧下でどう変化するのかを調べていて、実験室の装置で15万気圧をかけて玄武岩の試料を熱した。目標は1500度。ところが一瞬のうちに温度が目標を上回り、試料は溶け、周囲の物質と反応してぐちゃぐちゃになってしまった。

 「実験は失敗。でも、そのときガラスのような光るものを見つけた。試料を包むカプセルにグラファイト(炭素の鉱物)を使っていたので、あれ?ダイヤモンドかなと思った」

 天然のダイヤモンドは地下150~250キロの場所でグラファイトに超高圧超高温が加わることでできる。一方、人工ダイヤモンドの合成ではグラファイトに5万~6万気圧をかけ、金属の触媒を使って再結晶させる。

 ダイヤモンドは直接の研究対象ではなかったため詳しく調べることはしなかった。だが、ずっと頭の片隅から離れなかったという。

 ■愛媛ミカンの色合い

 89年、入舩教授は愛媛大学の助教授に着任。90年ごろからダイヤモンドの再現実験を始めた。ところがそう簡単にダイヤモンドはできなかった。

 しかし、1人でこつこつと実験を繰り返していたところ、5年後、ついにダイヤモンドを作ることに成功した。「予想より高い温度が必要で装置の限界の2500度まで上げた。25万気圧をかけ、やっとできた」

 できたダイヤモンドはミカン色に近い。愛媛といえばミカンなので「ヒメダイヤ」と名付けた。特性は1粒が10ナノメートルの多結晶(多くの結晶の集まり)で、世界一硬いこと。「10ナノメートルは1ミリの10万分の1。それがぎっしり詰まっている。ナノ領域の多結晶は単結晶より硬くなるんです」

 世界一硬いのに、ヒメダイヤは特殊なレーザーを使うと加工が容易なことが分かった。表面をつるつるに研磨することもできる。

 研究は2003年に英科学誌「ネイチャー」で発表。世界的に注目が高まり、現在は約30グループと研究を進めている。

 ■地球外惑星の研究に活用

 松山市の愛媛大キャンパスにある地球深部ダイナミクス研究センターには、ヒメダイヤの実験・研究を可能とするための大型の実験装置がそろう。いずれも「ORANGE(オレンジ)-」や「BOTCHAN(ぼっちゃん)」など愛媛を意識した名前が付けられている。実験室の名前も文豪・夏目漱石をもじった「創石(そうせき)実験室」だ。

 こうした環境で技術開発した結果、1センチ大のヒメダイヤを生み出せるまでになった。切削工具として商品化されているほか、高圧下で原子の結合を見る実験などに活用できるという。

 もともと惑星深部の構造や、超高圧高温下での物質の変化の研究を専門としている入舩教授。「ヒメダイヤを用いれば、さらに高圧をかけられる実験装置を作ることができ、地球外の惑星の研究にも役立てることができる」と意欲を燃やす。

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 文部科学省での展示は東館2階にある情報広場ラウンジで。ヒメダイヤの実物を紹介しているほか、約6分のビデオを見ることができる。

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