仏で植物患者、11年がかりの「尊厳死」 家族が是非めぐり法廷闘争

 【パリ=三井美奈】フランスで約10年間、植物状態にあった男性(42)が11日、延命措置の是非をめぐる家族の法廷対立の末、死亡した。破棄院(最高裁)の判断を受け、医師団が延命を停止した。男性の両親側は「国家による殺人だ」と批判。検察は同日、死因解明のため、男性の司法解剖を行うと発表した。

 フランスは2005年、末期患者の延命停止手続きを定めた「尊厳死法」を制定した。だが、今回の事件は患者本人が意志表明できず、家族の意見が異なる場合の制度実施の難しさをあらわにした。

 男性は元看護師で08年に交通事故にあい、医師団は不可逆的な植物状態に陥ったと判断した。妻は延命停止を求め13年、栄養や水分補給装置がいったん外された。その後、両親が差し止め請求を行い、装置が再装着された。国内法廷では医師の決定を支持する判決が相次いだが、両親は欧州人権裁判所や国連で「人権侵害」を主張。延命の是非は国民論議に発展した。男性は自発呼吸していた。

 仏尊厳死法は、医師は末期患者の希望を受けて、延命を停止できる制度を明記。患者が意志表明できない場合、医師団は近親者と相談し、合議の上で尊厳死を決めることができる。

 欧州では02年にオランダやベルギーで、患者本人の要請に基づき、医師が薬物で即死させる「安楽死」を法制化。フランスの尊厳死法は安楽死要求に歯止めをかける一方、無益な延命を回避し、末期患者の「安らかな死」を可能にするのが狙いだった。患者が元気なうちに延命拒否の意向を残す「事前指示書」(リビングウィル)の効力も認めた。

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