静岡・三保の地下海水活用でアニサキスフリーのサーモン陸上養殖

 静岡市清水区の三保半島で国内初の試みとして、食中毒を引き起こす寄生虫「アニサキス」を持たないトラウトサーモンの養殖場の建設が進んでいる。事業の多角化として水産事業に乗り出している建設用資材レンタルの「日建リース工業」(東京)が事業主体となり、産学官連携で商品開発を行う。関係者らは、アニサキスを持たないことで活魚で流通でき、その味わいと安全性の高さを売りに、新たな地域ブランドの創出につなげたい考え。

(静岡支局・石原颯)

 ■旧三保文化ランドに新養殖施設・産学連携

 新たな養殖施設が建設されるのは旧三保文化ランドの跡地、約4500平方メートル。この場所に計20個の水槽を作り、三保半島の地下海水をくみ上げて養殖を行う。11月にも完成する予定だ。市も今回の取り組みが地域経済に貢献するとして、6月補正予算に施設整備費4千万円を計上し、支援に乗り出している。

 日建リースは足場など建設資材のリース事業を柱としているが、近年、事業の多角化と第一次産業の振興を目的に水産事業を強化。平成29年に二酸化炭素を使って魚を水槽内で眠らせ、生きたまま輸送する技術を開発したのを皮切りに、流通の拠点となる魚の保管・配送施設「大阪活魚センター」(大阪府泉佐野市)を開設している。魚の流通の次は生産と、東海大海洋学部の秋山信彦教授が研究している地下海水を利用した陸上養殖に目を付けたという。

 ■鍵は三保半島ならではの地下海水

 東海大海洋学部ではこの地域特有の地下海水に着眼し、数十年来、研究成果を積み重ねてきた。秋山教授によると、三保半島の特異な地下海水こそアニサキスを持たないサーモンの養殖に欠かせないのだという。

 三保半島の地下海水には「私の知る限りここだけ」(秋山教授)という珍しい特徴がある。三保半島の地下約20~30メートルにある砂(さ)礫(れき)層に流れている地下海水の水温が19度程度と年間を通してほぼ一定なのだ。

 秋山教授が指摘するのは、駿河湾が急に深くなるという特性。水深の深い場所から、年間を通して水温の変動が少ない海水が浸透していると考えられるという。水深が深い場所では生物が少なく、寄生虫や付着生物がほとんどいない。さらに砂礫層を通過する過程で海水が濾過(ろか)され、無酸素で無菌の状態となる。そのため、アニサキスのような寄生虫が魚の体内に入り込むことはなくなり、活魚での流通が可能になるのだという。

 サーモンを海面養殖する場合は、夏季に海水温が適温を超えてしまう課題があるが、陸上に水槽を置き、地下海水を常にくみ上げ続けることで水温が安定し、季節を問わず養殖ができる。養殖期間の延長や出荷時期の調整が可能になるなど、事業者にとってのメリットにつながる。

 ■地域ブランド化に期待

 日建リースはこの地下海水で育てたトラウトサーモンを三保の地域ブランドの一つとして売り出したい狙い。国内産のサーモンはアニサキスを死滅させるためにほとんどが冷凍されており、活魚で流通できれば味や食感で差別化が図れる。日建リースの担当者は「まず地元の飲食店に出すことを中心に考えている。三保に来たら食べられると、人を呼び込みたい」と意欲をみせる。同社は来年の東京五輪開催までに初出荷したいとしている。

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