梅王国・和歌山が目をつけた梅酒ブーム 消費拡大にあの手この手

 収穫量日本一を誇る梅の産地・和歌山県で、梅酒の消費拡大に向けた取り組みが進んでいる。地元企業が毎年開催する飲み比べイベントは、例年2千人以上を集める人気イベントに成長。県も梅酒人気を後押しするため、多種多様な梅酒を味や香りで分類した「マッピング図」を2年がかりで作成した。若者の梅干し離れなどで梅自体の需要が低迷する中、梅王国・和歌山が梅酒ブームに活路を見いだそうとしている。(井上裕貴)

 ■和歌山の誇り

 「甘くておいしい」「梅酒って、こんなに種類があるんだ」

 今月2日、同県海南市の酒造会社「中野BC」で開かれた「梅酒BAR」。色鮮やかな梅酒や果実酒が並び、日中から頬を赤く染める酔客らでにぎわった。

 さまざまな梅酒を1杯100円から飲み比べできる恒例イベントで、10年目の今回は、梅と糖類、アルコールのみで作られた「本格梅酒」や蜂蜜入りで口当たりのいい「カクテル梅酒」など40種類以上の梅酒がずらりと並んだ。

 和歌山市の男性会社員(30)は「いろんな梅酒を気軽に試せてうれしい。梅は和歌山の誇りで、なくてはならない存在」とおかわりを繰り返した。

 同社の中野幸治社長(43)は「梅酒といっても、さまざまな味や楽しみ方の違いがある。(イベントで)梅酒を身近に感じてもらえれば」と話す。

 ■好みがひと目で

 女性ファンも全国的に増えている梅酒ブームを後押ししようと、県は今年3月、県産の本格梅酒44種類を甘みと酸味、香りで分類した「梅酒マッピング図」を2年がかりで作成した。

 全国を飛び回り、酒造メーカーのコンサルティングなどを手掛ける梅酒ソムリエの金谷優氏がテイスティングし、繊細な味や香りの違いを丁寧に分類。甘口、辛口、芳醇(ほうじゅん)、淡麗の4つの指標で、好みの梅酒をひと目で分かるようにした。

 県のホームページで公開し、東京で今月開かれた梅酒飲み比べイベントでも使用。県の担当者は「図を参考にしながら、ぜひお気に入りの一本を見つけてほしい」と呼びかける。

 ■起爆剤に

 こうした取り組みが必要な背景には、梅農家の減少や梅自体の需要減少などの課題がある。

 近畿農政局によると、県産梅の収穫量は昭和40年から54年連続全国1位を維持し、平成30年産の全国シェアは65%を占めた。

 ただ、県最大の産地・みなべ町によると、高齢化などもあり、梅生産が大半を占める農家の数は17年の1486軒から27年には1301軒に減少した。

 若い世代を中心に梅干し離れが進むなど梅自体の需要が低迷する中、需要喚起の新たな起爆剤として梅酒ブームに期待。さまざまな取り組みを進めている。

 みなべ町の隣の梅産地・同県田辺市では25年12月に「梅酒で乾杯条例」を制定。市と生産者、事業者が連携し、市民も協力した「紀州梅を原料とした梅酒・梅ジュースによる乾杯の奨励」などを明記した。

 県も海外の市場拡大を視野に入れ、これまでに世界遺産の高野山(同県高野町)で外国人観光客を対象にした本格梅酒の試飲会を開催するなどしてきた。今月末には香港で梅酒作り講座も開く予定だ。

 県の担当者は「自慢の梅を守り、継承するため、梅酒人気を盛り上げて世界にも売り出していきたい」と話している。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ