難病・潰瘍性大腸炎に効果「便移植療法」 腸内細菌環境リセット、7割が改善

【ここまで進んだ最新治療】

 慢性的に原因不明の難治性の腸炎が持続する「炎症性腸疾患(IBD)」。潰瘍性大腸炎とクローン病に代表され、完治する治療法がない難病に指定されている。近年は新薬の登場で症状(下痢、腹痛、血便)のコントロールが飛躍的に向上したが、なかには無効例や副作用で治療を続けられない人もいる。

 そこで副作用の少ない根本的治療が求められており、その候補の1つが「便移植療法」。国内でもいくつもの医療機関で医師主導の臨床研究が行われている。どんな治療法なのか。2014年から臨床研究を開始した順天堂大学医学部付属順天堂医院・消化器内科の石川大准教授が説明する。

 「人の腸内には1000種、100兆個以上の細菌が住んでいます。IBDなどの腸疾患の患者さんは、その腸内細菌の種類や数などのバランスが乱れていることが分かっています。便移植療法は、健康な人の便を患者さんの腸内に移植します。バランスの整った腸内細菌の塊(健康な人の便)を移植することで、患者さんの腸内細菌の乱れを抑制できる可能性があるのです」

 近年、便移植療法が注目されるようになったのは、13年に米医学誌に発表されたオランダの研究グループの論文がきっかけ。クロストリジウム・ディフィシル感染性腸炎に対して9割以上の治療効果が報告された。同疾患の治療法としては、米国ではすでにカプセル内服による便移植が行われているという。

 現在、国内の臨床研究で行われている便移植は、健康な人から提供されたドナー便を生理食塩水で処理し、その溶液を大腸内視鏡を使って患者の腸内に注入する。順天堂大学の場合は、便移植の前に3種類の抗生剤を服用して、1度患者の乱れた腸内細菌環境をリセットしてから移植を行うのが特徴だ。

 「臨床研究には、これまで160人以上の患者さん、70人以上のドナーの方に参加していただいています。効果は、短期(2カ月)では7割の患者さんに症状の改善が認められ、そのうち4割くらいは1回の治療で長期(2年間)の治療効果が持続しています」

 研究を進めて新たに分かってきたことは、年齢差や関係性など患者と便を提供するドナーの相性によって治療効果が変わってくること。どういう患者に、どういう構成やバランスの腸内細菌が最も適しているのか、今後はドナー便の選択や投与回数などを探りながら、個々の患者に合わせたオーダーメード治療を目指しているという。

 便移植療法の臨床研究は、中等症以上のIBDで薬を使っても症状のコントロールが難しい人や薬が合わない人などが対象。治療を受けたい人は主治医と相談した上で、病院(消化器内科)のホームページから参加の問い合わせができる。(新井貴)

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ