「合鴨の塩焼き」モモ・ロース・皮3種のこだわりの食べ方で! 新大久保「サムスンネ」

【肉道場入門!】絶品必食編

 鴨は、ごちそうだ。

 フランス料理で言えば、鴨のローストは古典の王道だし、蕎麦屋における、鴨南蛮や鴨せいろを頼むときだって、王様気分が味わえる。

 東京・新大久保駅から大久保通りを東へ徒歩5、6分。駅前の喧騒が落ち着きかけたあたりに「サムスンネ」はある。

 看板メニューは「合鴨の塩焼き」。きれいに切り分けられた合鴨のモモ、ロース、皮の3種を焼いてくれる。

 ピカピカに磨き上げられた焼き鍋に、オモニがおもむろにモモやロースを乗せる。

 ジューッという肉焼き特有の音とともに風情のある煙が立ち上る。焼き上がりを待つ時間もごちそうだ。卓上に並べられたキムチなどの前菜をつまみながら鴨を待つ。

 鉄板上から鴨が引き上げられ始める。真打ち登場は近い。焼き上がった鴨は皿に盛り込まれ、卓上へ登場する。

 湧き上がる歓声とともに四方八方から、皿の上の鴨を目掛けて箸がのびてくる。

 ここで忘れてはならないのが、合鴨を頼むとセットでついてくる大根の酢漬け。まるで千枚漬けのように、皿の上に山と積まれるのだが、決してつまみにしてはならない。この大根漬けで鴨を巻いて食べるのが流儀なのだ。

 鴨自体の味付けは塩のみ。余計な味つけはされていない。ジビエのような鴨の野趣が爽やかな大根漬けの香りと絡み合うようにスッと鼻に抜け、力強い味わいが膨らむ。

 柔らかい酸味と大根のみずみずしさで、鴨の鉄分が適度に洗い流され、自分でも気づかぬうちにまた巻いてしまう。

 もはや無限ループだ。そして何より最高なのが皮である。焼きもモモ、ロースとはひと味違う。身の脂を抜きながら、香ばしい焼き目を表面につけていく。焼いた脂が鍋底から、脂受けの丼へと流れて滴り落ちる。

 勇ましい焼き目のついた一片を口に運ぶ。香ばしさが脳へと抜け、噛むほどに旨さが膨らみながらも味は澄んでいく。存分に味わい尽くしたところでマッコリやチャミスルをクイッ!

 するすると流れゆく極上の野趣と脂。「1日頑張った甲斐がある」。心からそう思える鴨がある。

 ■松浦達也(まつうら・たつや) 編集者/ライター。レシピから外食まで肉事情に詳しく、専門誌での執筆やテレビなどで活躍。「東京最高のレストラン」(ぴあ刊)審査員。

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