薄暗い山の斜面にアジサイ咲き誇る 「南沢あじさい山」

【週末、山へ行こう】南沢あじさい山(東京都あきる野市)

 梅雨時には、山にアジサイのお花見に行きたい。山寺の境内に植栽されたアジサイや、里山の道沿いにアジサイが咲いているのは、なんとも風情がある。青紫色や白、ピンク色の大輪の花の群落は、晴れているときよりも霧に煙っているときのほうが美しいと感じる。

 東京都あきる野市に位置する「南沢あじさい山」は、近年注目され、多くの人が訪れるアジサイの名所。山の斜面にびっしりとアジサイが植栽されていて、その数およそ1万株。地主の南沢忠一さん(89)が50年近い年月をかけ、丹精こめて育ててきたものだ。色や形もさまざまなアジサイが山を彩っている。

 「アジサイに埋もれているような気分が味わえるよ」「山の中にこんなにアジサイが咲いている景色はなかなかないよ」「ぜひ行ってみたらいい」。訪れた人が口をそろえて言うのを聞き、ずっと行きたいと思っていた。

 念願かなって、訪れることができたのは昨年6月末。「今が一番いい時季」と、ワクワクしながら山に向かった。道のあちこちに、赤いトンガリ帽子の小人が目印に立っている。あじさい山が近くなるにつれて、舗装道路の脇にもアジサイが見られて自然と足早になる。

 入口で受付を済ませ、「ちょうど満開の時季ですよね、楽しみにしてきたんですよ」と言うと、受付の方はちょっと浮かない顔をされた。「満開なんですけどね…、雨がしばらく降っていなくて、ここ数日は気温がとても高かったので、しおれている花が多いかもしれません。すみません」

 …ああ、そんなこともあるんだ。公園の花壇ではない、自然を生かして作られた花園だから、開花状況は気候に大きく左右される。歩き始めてみると、たしかに満開だけど日の当たっているところのアジサイは元気がない感じだった。それでも、山に向かう散策路の両脇をアジサイが埋め尽くしているのは壮観だったし、針葉樹の繁る山の斜面を埋めるように咲き乱れる青紫色のアジサイは美しく、風に乗ってアジサイの花の匂いがふわっと漂ってくるよう。花に囲まれて歩いているだけで幸せな気持ちになった。

 今年もアジサイを見にいこう。あえてうっすら霧雨の降る日に、しっとりと雨を含んで瑞々しいアジサイに出合うのもよいかもしれない。

 ■南沢あじさい山おすすめルート 武蔵五日市駅…南沢あじさい山…山内散策…武蔵五日市駅歩行時間約2時間/難易度★(最高難易度★★★★★)

 ■コースガイド JR五日市線武蔵五日市駅からあじさい山の入口までは徒歩40分ほど。分岐には道標が立てられていて分かりやすい。今年は武蔵五日市駅からシャトルバスの運行もある。山内は一応順路はあるが、自由に歩くことができる。金比羅山登山と組み合わせても。

 ■おすすめシーズン 南沢あじさい山のあじさいの開花期は例年6月中旬~7月上旬。開花シーズンは入山料がかかり、2019年は6月1日~7月7日、入山料は500円。

 ■西野淑子(にしの・としこ) オールラウンドに山を楽しむライター。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド。著書に「東京近郊ゆる登山」(実業之日本社)、「山歩きスタートブック」(技術評論社)など。NHK文化センター「東京近郊ゆる登山講座」講師。

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