「勉強感」より面白さ 科学児童書がヒット、出版界の救世主となるか

 科学絵本、図鑑、科学漫画…。出版不況が続く中で、科学を扱った児童書が健闘している。大人には苦手意識を持つ人も多い「科学」だが、ヒット作には子供の興味をひく工夫が満載で「勉強させられている感」がないのが特徴だ。出版界の救世主となるか。(加藤聖子)

 物語性で入りやすく

 「みんな うんち」(五味太郎作)、「はははのはなし」(加古里子文・絵)-科学絵本の名作を数多く生み出してきたのが福音館書店の発行する月刊絵本「かがくのとも」だ。今年で創刊50周年、通巻600冊以上にのぼる。年12冊の中から反響の大きかった2~3冊を単行本として発行しており、冒頭の2冊は代表的なロングセラーだ。同編集長の川鍋雅則さんは「従来の科学教育とは一線を画し、子供が本当に楽しめるものを作ろうとこだわってきた。テーマは科学だが、物語性を持たせているので子供もその世界に入りやすい」と特徴を語る。

 編集で常に意識しているのは、「読んだ後に、驚きや広がりがあるか」と、「最新のテクノロジーを説明するのではなく、そのベースになる背景や原理をどう表現するか」。川鍋さんは「科学絵本を通じて、心のタネをたくさん持っておいてもらえたら」と話す。

 テーマや切り口も工夫

 子供が科学に親しむのに欠かせないのが図鑑だ。図鑑は、実は海外にはなく、日本独自の形式だという。

 現在、学習図鑑の売り上げ1位は平成14年から刊行される「小学館の図鑑 NEO(ネオ)」シリーズ(全23巻)で累計発行部数は900万部超。同シリーズの編集長、北川吉隆さんは好調の理由を「子供にとって楽しく読めるのはもちろん、親御さんの『子供に何かを見せるのであれば学びに役立つ良いものを』という思いに応えられているからでは」と分析する。

 定番は「昆虫」や「恐竜」だが、最近は「危険生物」や「宇宙」も人気だ。こうした定番外のテーマや「くらべる図鑑」といった切り口、付属DVD、実生活で役立つコラムを盛り込むなど、エンタメとして楽しみながら世界が広がるよう随所に工夫が光る。

 子供が主人公の漫画

 累計860万部。今、小学生に大人気の科学漫画が朝日新聞出版の「サバイバル」シリーズ(20年刊行開始、全67巻)だ。韓国の漫画を翻訳したもので、子供たちが「深海」や「人体」といった世界に入り込み、数々のピンチに立ち向かう。笑いあり涙ありのストーリーが面白く、科学的にも本格的な内容が盛り込まれているので、おのずと科学の知識も身につく。同社サバイバルプロジェクト室室長の須田剛さんは「従来の科学漫画は教科書の延長線上で、先生や博士がテーマを解説する形だったが、このシリーズは子供が主人公。子供が共感しやすい」と人気の理由を語る。

 テーマも豊富で、異常気象や人工知能(AI)といった、小学生が実生活でも見聞きする題材が少なくない。須田室長は「子供たちも読んで知ったことを家族と話したり、学校や家庭で壁新聞にまとめたりして、さらなる興味や自信につなげている」と話している。

 共感的に読む面白さ

 本紙コラム「親子でわくわく かがく絵本」を執筆する国立音楽大教授、同付属幼稚園長の林浩子さんは「科学と聞くと、大人はついお勉強的なものを想像するが、本来子供は科学が大好き。生き物、自然、車、料理などは子供にとって最も身近な題材」と指摘する。その上で「従来の科学教育は、大人が教科書や授業で知識を与えるといった側面が強かった。優れた図鑑や科学絵本などには、子供がその世界に入り、共感しながら見ていける面白さがあるのでは」との見方を示した。

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