全国61万人…深刻化する「中高年引きこもり」 急がれる正しい理解と適切なケア

 児童ら20人を殺傷し自殺した51歳の岩崎隆一容疑者と、元農水次官の父親に殺害された44歳の熊沢英一郎さんはともに長期間の引きこもり生活を送っていたとみられる。中高年の引きこもりは全国に61万人とされ、80代の親が引きこもる50代の子の面倒をみる「8050(ハチマルゴーマル)問題」も深刻だ。正しい理解と適切なケアが急務だが、現実はどうなっているのか。

 内閣府の2018年度の調査では、半年以上にわたり家族以外とほとんど交流せず、自宅にいる40~64歳の引きこもりが全国で61万3000人と推計される。子とともに親も高齢化し、80代の親とひきこもる50代の子の家庭も増えている。

 「35歳を超えた中高年は、脳の組成が完成していて、今から考え方を変えるということは難しい」と指摘するのは、ヒガノクリニックの日向野春総院長だ。

 中高年の引きこもりについて「比較的多くみられる特徴は、兄弟が少なく、幼少期から自分の個室が与えられるなど経済的にも豊かな家庭で育ってきていること」という日向野氏。

 「病気が理由で引きこもりがちな場合には、薬を用いた治療を行い、自分にあった働き方を見つけることで社会復帰の後押しができるが、健康な状態で引きこもりが続いている場合には、急に『働け』と言っても逆効果で、本人を刺激する起爆剤になりかねない」と引きこもりから抜け出すことの難しさを語る。

 現場ではどのように中高年の引きこもりに対するケアが行われているのか。

 「20~30代と比べても、中高年の引きこもりには粘り強い呼びかけが必要だ」と話すのは、40~50代の引きこもり家庭支援組織「市民の会 エスポワール京都」を主宰する山田孝明氏。

 『親の「死体」と生きる若者たち』(青林堂)の著書もある山田氏は、「引きこもり当事者は、家族の意見はあまり聞かず、自分と同じ目線で話を聴いてくれる相手を求めていることが多い。何回も手紙を送ったり、訪問を続けたりすることで『自分の仲間に会ってみたい』などと自発的に会に参加しようと思うまで待つことが大切だ」と話す。

 もちろん中高年の引きこもりが全て岩崎容疑者のような考えや行動に出るわけではない。筑波大学人間系の原田隆之教授(犯罪心理学)は「引きこもりという状況が岩崎容疑者の自己中心的で身勝手なパーソナリティーの形成に影響を与えた可能性はあるが、中高年の引きこもりが全員凶行に走る可能性を持つわけではない」と強調する。

 短期間で解決する問題ではないが、前出の山田氏はこう呼びかける。

 「“ゴール”は就労することだけではなく、別の形でも自分にできることを見つけて一歩踏み出すことが重要だ」

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