「働きづらさ」どう変える 精神障害者オフィス、雇用現場の最前線

 大日本住友製薬は昨年7月、精神障害者雇用の目的で特例子会社「ココワーク」を設立。水耕栽培による野菜栽培と販売を手掛け、設備投資に1億円を投じた。

 大日本住友は統合失調症の治療薬「ラツーダ(ルラシドン)」を製造販売するなど精神神経領域の創薬に力を入れている。ココワークの渡辺晶子社長は「治療薬を通じて疾患を詳しく知ることになり、精神障害の治療には薬だけでなく環境の整備も重要だと感じていた」と話す。同社では通院のための休暇制度を導入、また、従業員には日報を書いてもらい体調管理を進めている。

 今年4月、30代と40代の統合失調症の男性5人を採用。大阪府吹田市の水耕栽培施設で、30代の男性従業員は「これまでの職場では、障害を隠していた。同僚と親しくなっても、嘘をついている気がした。今は周囲の人みんなに理解してもらって、心が晴れた」と話す。

 5人の入社で、大日本住友の法定雇用率は2・2%に。今後は収益をあげて自立するのが目標だ。

 ■中小には厳しく

 厚生労働省によると、民間企業の障害者雇用数(平成30年6月時点)は前年比7・9%増の53万4769・5人(短時間労働者は0・5人分と計算)。過去最多となった。

 中でも精神障害者は6万7395人で34・7%増と顕著に伸びた。大阪労働局によると、大阪府内の企業で働く精神障害者も39・3%増の5361人と、大きく増加している。

 国は、法定雇用率を達成できなかった企業から事実上の“罰金”となる納付金を徴収しており、精神障害者雇用の義務化を受けて雇用が拡大した格好だ。

 ただ、大企業は特例子会社を設立したり事業を広げたりすることで雇用を拡大しやすいが、中小企業は厳しい立場に置かれている。

 障害者雇用に詳しい埼玉県立大の朝日雅也教授は「中小企業では、特例子会社を設立したり障害者雇用専門の担当者を置くことなどが難しい。少ない従業員で、障害のある従業員への対応を迫られる面がある」と指摘する。

 ただ、現在は障害者就労支援に関し、公的機関だけでなく民間企業も乗り出しているなどとして「企業規模に関係なく、就労支援機関などと連携して障害者雇用に取り組むことを期待したい」と話している。

 発達障害などの精神障害がある学生と企業をつなげる取り組みが関西でスタートしている。

 就労移行支援企業「エンカレッジ」などは今年2月、大阪市内でマッチングイベント「みんなでサポート就活」を開催。パナソニックや積水ハウス、サラヤなど17社が参加、今春卒業予定だった学生34人が訪れた。大学が、学生の得意分野や必要な支援などを事前に企業に伝えるシステムを導入。10人に内定が出た。

 「障害の影響で、就職活動と学業の両立に苦戦する学生も多いが、法定雇用率の引き上げの影響もあり、社会が変化し、障害者雇用が広がっていると感じる」とエンカレッジの窪貴志代表は話す。「今回内定に至らなかった学生も、今後もサポートして就職につなげていきたい」とする。

 一方で、精神障害者は身体・知的障害者に比べて、離職率も高いと指摘。「定着には、職場の同僚の理解や周囲の継続的サポートは不可欠。働きづらさを抱える人たちにはよき伴走役が必要だ」と話している。

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