「上乗せ」保険に関心 地震で損壊に手厚く補償

 大阪北部地震から間もなく1年がたつ。昨年は北海道でも最大震度7を観測する地震が起きたこともあり、保険による備えに関心が高まっている。通常の地震保険に加え、民間会社が独自に補償を上乗せする商品も登場しており、世界でも珍しいとされる日本の地震保険は生活に合わせて、その選択の幅が増えている。(牛田久美)

 ◆修理費の全額を

 昨年6月の大阪北部地震。木造2階建て住宅が壊れ「小半損」と認定された大阪府高槻市の70代男性は、加入中の地震保険金270万円に加え、「上乗せ補償特約」の保険金270万円を受け取り、計540万円で全て修理できた。

 損害保険大手、東京海上日動火災の担当者は「契約時に説明したものの、上乗せ特約の認識は薄かったようだ。被災現場で立ち会って、算出した保険金額に対して倍額を支払うと伝えたら、安心の表情に変わった」と振り返る。

 損保ジャパン日本興亜も「上乗せ特約への関心が高まっている。今年1月の全国の契約は前年同月比2割増。昨年、北海道は前年比1・5倍、関西は1・6倍に増えた」と説明する。

 ◆「阪神」で初発動

 通常の地震保険は官民共同運営。保険会社は利潤を得ず、約2200億円を超えると政府が99・8%を払う仕組みで公共性が高い。

 阪神大震災(保険金支払額783億円)で初めて発動され、東日本大震災では約1兆2800億円が支払われた。

 財務省の山口理恵・地震保険監査官は「約11兆円の枠組みで、関東大震災級がいま起きても全額払いできる」と語る。保険金は家の新築や修繕だけでなく、転居や子供の学費など使途が自由なのも特徴だ。

 しかし、保険金を自由に使える一方で、通常の地震保険の目的は「(当面の)生活の安定」(地震保険法1条)にとどまり、当座をしのぐのが狙い。倒壊した家屋の再建には不十分とする声が長らくあった。保険料も、中立の機関が算定して都道府県ごとに一律。補償内容も火災保険金額の50%が限度で、「100%の補償」を望む声が根強くあった。

 ◆二重ローン回避

 そこで誕生したのが民間の上乗せ特約だ。

 東京海上日動と損保ジャパンは地震の補償を50%まで増やす特約を開発。地震保険金と合わせて、最大100%を補償する。

 火災保険の特約で地震による火災に備えるのが、三井住友海上火災とあいおいニッセイ同和。自動セットされる5%を30%や50%へ切り替え、最大100%の補償を得られる。

 気になるのは保険料だ。甚大な被害が予想され、やや高い。宮城は地震保険8600円に上乗せ特約が1万6070円で計2万4670円、東京は2万300円に3万9830円で計6万130円-など(損保ジャパンの試算)。

 しかし、加入者は「高齢で住宅ローンを新たに組めないので、割高でも払えるうちは入りたい」(宮城県の女性)という声が目立つっている。

 若い世代にとっては、ローン返済中の建物が壊れ、建て替えるローンを背負う「二重ローン」を回避できる。二重ローンは東日本大震災の後、被災者の生活を圧迫し、社会問題化した。

 分譲マンションでは、管理組合が上乗せ特約に入ることで、共用部分の損害をまかなえる。住民に新たな負担が発生せず、再建へ合意を形成しやすいという。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ