世界水フォーラム元事務局長が見た天皇陛下

 1日に即位した天皇陛下は、平成15年に京都市で開催された第3回世界水フォーラムで琵琶湖や淀川の水運をテーマに講演して以来、水への深い知見と洞察によって世界から共感と尊敬を集められてきた。フォーラム事務局長を務めた元建設省河川局長の尾田栄章(ひであき)さん(77)=奈良市=は「陛下は、人と水との幸せな関わりを考えるための種を世界に配ってこられた」と語る。(川西健士郎)

 世界各国の水の専門家が集う世界水フォーラムは、民間シンクタンク「世界水会議」が水問題解決を目指して1997(平成9)年から3年ごとに開催している。京都で開催された第3回で名誉総裁を務めた陛下は、京都が琵琶湖と淀川を通じて各地と結びついていた歴史を解説された。

 その後も、陛下は同フォーラムで講演したほか、国連の「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁に就任するなど「水」と関わってこられた。尾田さんは「世界水会議の幹部が『陛下は政治を超越した立場から全体を導いていかれる存在』と話したように、世界に求められてのご就任でした」と説明する。

 陛下は、学習院大時代、室町時代の兵庫北関(きたせき)(現・神戸港)に入港した船舶の記録「兵庫北関入船納帳(いりふねのうちょう)」などから瀬戸内海の水運史を研究。留学先の英オックスフォード大では17~18世紀のテムズ川が交通路として発展していく過程を明らかにされた。

 一方、昭和62年には、訪問先のネパールで、多くの女性や子供たちが水を求め、水がめを持って列をなす光景に直面した。これをきっかけに、陛下は水問題に深い関心を向けられるようになったという。

 平成19年、第1回アジア・太平洋水サミット(大分県別府市)の記念講演で、陛下はネパールでの経験をもとに「従来自分が研究してきた水運だけでなく、環境、衛生、教育などさまざまな面で人間の社会や生活と密接につながっているのだという認識を持ち、関心を深めていった」と語られている。

 尾田さんはこれまで、水フォーラムなどで、普段は寡黙な人が陛下と会話すると、とたんに冗舌になる場面に遭遇してきた。エジプトの閣僚の一人は「なぜ、あんなにしゃべったのだろうか」と不思議がったほどだった。「陛下は大変聞き上手で、ごく自然な対話の中で、相手の話を引き出されるのです」。尾田さんは振り返る。

 国連・水と衛生に関する諮問委員会では、陛下が歯を磨いている最中にたまたま水を出しっぱなしにしていたところ、当時幼少だった長女の敬宮(としのみや)愛子さまに「無駄遣いをしないように」と注意されたというほほえましいエピソードを披露され、会場が笑いに包まれたこともあった。

 尾田さんは「陛下は、世界の人々が自分の国のこととして水問題を受け止められるように語られる。そのお人柄やご研鑽(けんさん)が、新たなお立場でもにじみ出てこられるのではないでしょうか」と話している。

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