天皇、皇后両陛下、上皇ご夫妻に支えられた“モモづくり” 新時代到来に期待「品質で原発事故乗り越える」

 令和の幕開けに期待を寄せる農家がいる。福島県桑折町でモモを栽培する親子だ。高品質を誇り、皇室にもモモを献上してきたが、原発事故で価格の下落や風評被害に見舞われた。これまで、天皇、皇后両陛下と上皇ご夫妻が訪問されたことを心の糧にして、「原発事故を乗り越えてみせる」と再起を誓っている。(大渡美咲)

 祖父の代から90年続くモモ農家の南友祐(ともすけ)さん(72)は、息子の祐宏(まさひろ)さん(43)と一緒に、桑折町でモモを作ってきた。原発事故から8年が過ぎた今年4月も、おいしい実が成るよう、不要な花を取る花落とし作業に精を出した。

 品質は折り紙付きだ。平成6年から同町はモモを皇室に献上。親子のものも、その一つに選ばれた。友祐さんは「おいしいものを追求してきたが、献上できるモモが作れるようになって努力が実った」と語る。

 8年4月、「自慢」の農園を、皇太子時代の天皇陛下が皇后さまと一緒に訪問された。「こおり桃源郷」と呼ばれる、ピンクのじゅうたんを敷き詰めたかのように一面に咲いたモモの花。「きれいですね」。両陛下がそう述べられたのが、友祐さんの誇りになった。

 だが、順風満帆に見えたモモづくりは、原発事故で一変した。価格は大幅に下落。モモの木に付いた放射性物質を1本1本洗い流したり、削ったりする対応に追われた。さらに汚染を調べる検査も実施し、安全性を立証したが、風評被害を拭いさることは容易ではなかった。1箱5千円だったものが5百円で買いたたかれ、さらには「売れずに戻ってきたものもあった」(友祐さん)という。

 そんな中、25年7月に、上皇ご夫妻のご訪問を受けた。直前の大雨で、農園のご視察は中止となったが、祐宏さんが、滞在先に招かれ、懇談の場が設けられた。上皇ご夫妻がモモを召し上がる姿を見て、勇気づけられた。

 2年後の27年7月には、上皇ご夫妻の農園のご視察も実現した。言葉を交わした際、前回訪問できなかったことを気遣われたという。祐宏さんは「よりよいモモを作ろうという意欲がわいた」という。

 このご訪問を機に、価格は回復の兆しを見せた。親子は「新しい時代に、さらに品質を向上させたい」と新時代のモモ作りを意気込んでいる。

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