平成の証言 「STAP細胞は、あります」

 31年4月30日の終わりに向けてカウントダウンが始まった平成時代。私たちが受け止め、発した言葉は時代の証言となって「あのとき」をよみがえらせます。

 「いつかばれるんじゃないかという気持ちはあった」(26年3月:作曲家として活動した佐村河内(さむらごうち)守氏)

 「両耳が聞こえない作曲家」として知られた佐村河内氏(50)が、大学非常勤講師の男性(43)に楽曲を代作させていたことが分かり、佐村河内氏は7日、東京都内のホテルで会見して「私の嘘でご迷惑をおかけしました」と謝罪した。「テレビで取り上げられてから、自分が制御できないくらい大きな存在になってしまい、言い出せなかった」と胸中を吐露した佐村河内氏。NHKは「取材過程で気づけなかった」と異例の謝罪を行った。

 「STAP(スタップ)細胞は、あります」(26年4月:理化学研究所の小保方晴子・研究ユニットリーダー)

 この年の1月、小保方氏(30)らが新たな万能細胞「STAP細胞」を作製したと英科学誌ネイチャーに発表した。小保方氏は「リケジョ(理系女子)の星」として注目を浴びたが、図表に捏造(ねつぞう)と改竄(かいざん)が指摘され、理研の調査委員会は不正を認定。小保方氏は4月9日に会見して不正を否定し、「作製に200回以上成功した」と主張した。しかし再現実験は成功せず、最終的に論文は撤回。共著者は自殺し、小保方氏は12月に理研を退職した。

 「風評被害を助長する印象で、極めて残念だ」(26年5月:漫画「美味しんぼ」に、福島県の佐藤雄平知事)

 「私も鼻血が出る」「今の福島に住んではいけない」。12日発売の週刊誌に掲載されたグルメ漫画「美味しんぼ」で、原発事故による放射線の影響で福島県や震災がれきを処分した大阪市の処分場周辺で鼻血を出す人が多くいるとする表現があり、批判の声が高まった。佐藤知事は同日、風評への懸念を訴え、専門家も「科学的にあり得ない」と指摘。発行元の小学館は「真摯(しんし)に受け止め、表現のあり方について今一度見直していく」との見解を発表した。

 「自分が早く結婚したらいいじゃないか」「産めないのか」(26年6月:東京都議会でのやじ)

 18日、都議会本会議の一般質問で、妊娠や出産などの支援策を質問した女性都議(35)に対し、“セクハラやじ”が飛んだ。女性都議がこれをツイッターに書き込んだことから、都議会に批判と苦情が殺到、19日までに千件を超えた。誰が発言したかが焦点になり、23日に「早く結婚したらいいじゃないか」は自民党の男性都議(51)だったと判明。同日、本人に直接謝罪した。この騒動は海外でも報道され、「世界に恥をさらした」と評された。

 「本日午前、九州電力川内(せんだい)原発の審査書案を了承した。時間はかかったが、一つの山は越えたと思う」(26年7月:原子力規制委員会の田中俊一委員長)

 16日、川内原発1、2号機(鹿児島県)が、東京電力福島第1原発事故後に設けられた新規制基準に基づく規制委の安全審査の合格第1号となった。基準は重大事故や地震・津波への対策を大幅に強化。審査期間は当初、半年程度とみられたが、川内原発は1年を要した。地震を引き起こす活断層の評価などで審査は長期化し、6年目に入った原発もある。これまでに8原発15基が合格、9基が再稼働した。

 「(『慰安婦を強制連行した』との証言について)虚偽だと判断し、記事を取り消します」(26年8月5日付の朝日新聞朝刊)

 5日、朝日新聞は自社の慰安婦問題報道について一部の記事が虚構だったとする検証結果を掲載した。16回にわたって記事にし、国際社会に問題が広がる根拠とされた吉田清治氏の「強制連行」証言を取り消した。1カ月後の9月11日、今度は5月に報じた「東京電力福島第1原発の所員が事故時に命令違反で撤退していた」とする記事が誤りだったとして取り消し、謝罪。木村伊量(ただかず)社長は引責辞任した。

 「噴火しちゃったんだ! 石がごろごろ降ってくる。オレはもうだめだ」(26年9月:御嶽山噴火で犠牲になった41歳男性)

 27日午前11時52分ごろ、長野県と岐阜県にまたがる御嶽山(3067メートル)が噴火した。直前まで噴火警戒レベルは1で、火口付近にいた無防備の登山客を噴石が襲った。妻と登山していた静岡県の男性は、パニック状態の中で母親に電話をかけ、山の状況を伝えていた。58人が死亡し、雪のため10月に打ち切られた捜索は翌年7月に再開したものの、5人の遺体は未発見。戦後最悪の火山災害だった。

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