缶バッジで痴漢防げ! 女子高生被害きっかけに

 女性の心に深い傷を残す卑劣な犯罪、痴漢。痴漢に立ち向かおうとした被害者の女子高生らのアイデアをもとに、大阪で生まれた「痴漢抑止バッジ」が、じわり広がっている。毎年デザイナー志望の学生らから広くデザインを募り、平成28年から商品化され、販売されているもので、今年も3月から新たなデザインのバッジを販売している。 

 「私たちは泣き寝入りしません」「痴漢は犯罪です」

 被害者から痴漢加害者への強いメッセージとともに、ポップに描かれた警察官と女子高生の姿は痴漢を逃すまいと周囲に目を光らせているよう。デザインを学ぶ学生らを対象に、痴漢抑止のデザインを広く公募するコンテストで選ばれた最優秀賞のデザインだ。

 コンテストは一般社団法人「痴漢抑止活動センター」(大阪)が主催し、今回が4回目。731作品が寄せられ、選ばれた6作品が、3月8日から大阪メトロの駅の売店などで販売(1個540円)中だ。

 同センターの松永弥生理事長(53)がバッジを商品化したきっかけは27年、東京に住む幼なじみの女性の娘が、高校進学を機に乗り始めた電車内でたびたび痴漢被害に遭うようになったことだった。

 女性と娘は「痴漢は犯罪」「泣き寝入りしない」と書かれたプレートを自作して通学かばんにつけ、被害には遭わなくなった。「そのアイデアや娘さんの勇気には感心しましたが、たった一人でプレートをつけて乗車する姿を想像すると、切なかった」(松永さん)。

 松永さんはそのアイデアを缶バッジという形に変え、デザイナー志望の学生らから募った案を商品化することを提案した。多くの人がつけやすいバッジが普及すれば、当事者意識を持って痴漢対策を考えてくれる仲間も増え、たった一人で痴漢に立ち向かう必要もなくなる-。そんな思いから缶バッジは生まれた。

 「被害者に立ち向かわせるのか」「痴漢にねらわれやすいと、逆にバッジが示すことにならないか」-など、不安の声も聞かれたが、バッジの利用者からは「安心して電車に乗れるようになった」「痴漢被害がぴたっとやんだ」など、支持する多数の声が寄せられているという。松永さんは「本来は、バッジをつけずに、安心して電車に乗れる社会になって」と話した。

 松永さんのアイデアに、鉄道事業者からも賛同する動きが現れた。大阪市営地下鉄(現大阪メトロ)なんば駅で28年、オリジナルの痴漢防止缶バッジが配られるようになったのだ。

 缶バッジは、同駅の駅長だった松山清史・現日本橋管区駅長(59)が、職員とつくったものだった。松山さん自身、娘が高校生のころに痴漢被害を受けた経験があり、「安心して乗れる電車を目指すには、社会全体で『痴漢を許さない』という機運を高めるしかない」と思ったという。

 バッジは現在も職員が業務の合間をぬって手作りしており、昨年度は約5400個を制作し、なんばや梅田など7駅で無料配布した。今年度も配布を予定しており、松山さんは「なんば発の取り組みがメトロ全体に広がり、やがて関西の鉄道から痴漢をなくす力になれば」と期待を寄せる。

     ◇

 痴漢抑止活動センターの痴漢抑止バッジは、大阪メトロ内のローソン全店と南海電鉄のアンスリー一部店舗、コクミンドラッグ全国40店で販売。インターネットサイト(https://tarjk.thebase.in/2)でも購入できる。(木ノ下めぐみ)

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