働き方改革の推進策 会社と距離が離れていても「テレワーク」で柔軟な働き方へ

 ■上司・実家 部下・会社、遠距離でともに働く

 働き方改革の推進策のひとつとして、柔軟な働き方がしやすい環境の整備が求められている。その鍵を握るのが、テレビ電話やインターネットを活用し、自宅などで仕事をする「テレワーク」の浸透だ。ただ、企業の導入率はまだ低いのが現状。要職にありながら、普段は実家でテレワークする男性管理職に話を聞いた。

 ◆東京と神戸で

 「アプリでエラーが起きて、別の方法で対応してみるほうがいいでしょうか?」。人材サービス会社「UZUZ(ウズウズ)」(東京都新宿区)の管理部、大浜尚子さん(34)は、業務で上司に指示を仰ぐとき、ウェブ会議ができるパソコン画面に向かって話しかける。

 画面に映るのは、上司で経営企画マネジャーの羽原佳希(はばら・よしき)さん(31)。経営企画業務と経理など管理部門の責任者を務めながらも、仕事机は本社から約500キロ離れた神戸市内の実家にある。

 羽原さんは平成29年5月、父の病気を理由に東京から神戸にUターン。担務と肩書はそのままで、週5日、自宅から徒歩5分の実家でテレワークする。

 部下は2人。午前8時20分、新聞を読んだ後、その日の仕事の流れをイメージしながら準備を始める。まず社内SNS「チャットワーク」の「タスク(作業)管理」のページを立ち上げ、作業を確認。優先順位を判断しながら遠くの部下に仕事を分配していく。

 ◆対話が活性化

 在宅勤務に向けた事前準備には1年をかけた。請求書の処理など定型的な業務は、部下に自動で仕事が割り振られるようにし、進捗(しんちょく)状況が誰にでも分かるように仕組みを作った。「業務の効率と生産性が高まった」という。

 一方、羽原さんが不在になった当初は、部下との情報共有に時差や選別が生じ、小さな連絡ミスなどが多発した。「事態に気づいてからはメンバーが直面している疑問やトラブル解決を仕事の最優先事項にした。東京にいたとき以上に部下を気にかけている」と羽原さん。メールではくみきれない思いや悩みを理解するため、「(部下の)声のトーンで状況を判断したい」となるべく電話で話す。在宅ではできない業務で月に1~2度、出社する際は、「部下を飲みに誘うようにしている」という。

 その工夫と思いは伝わり、部下の瀧水貴博さん(29)は「相談をまめにするようになったので、むしろ対話が活性化した」と話す。

 ◆国も「推進」だが…

 在宅勤務を含むテレワークは、ワーク・ライフ・バランスの促進と、2020年東京五輪・パラリンピック開催時の混雑緩和策として推進機運が高まるが、導入率はまだ低い。

 IT調査会社「IDC Japan」(東京都千代田区)によると、国内企業のテレワーク導入率は29年の推計値で4・7%。また国土交通省の調査(29年度)では、企業で働く3万6450人のうち「勤務先にテレワーク制度等あり」と答えたのは16・3%、会社の制度を利用してテレワークしている人は9%にとどまった。国は五輪開催の32年にこれを15・4%にするとの目標を掲げる。

 テレワーク推進に必要なのは何か。実際、導入に踏み切ったUZUZ専務取締役の川畑翔太郎さん(32)は、「管理職から取り組むことで、部下も制度を利用しやすくなり、働きやすい環境づくりへの会社の本気度が伝わる」と話す。

 在宅勤務の導入支援を行う「テレワークマネジメント」の田澤由利社長は、「テレワークは介護が身近な問題となる管理職世代も辞めずに済み、地方の優秀な人材の雇用もできて人材不足の解消にもつながる」と話している。

 ≪編集後記≫

 “遠距離上司”になってから、より部下を気遣うようになったと羽原佳希さん。職が「場」に縛られないからこそ、上司は部下と業務を常に気にかけ、部下は上司と意識的に情報共有するようになる。ポスト平成の上司は今よりもっと、コミュニケーション力が求められる気がしました。(津川綾子)

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