井上靖「星と祭」復刊へ来春から資金募る 滋賀・長浜 

 昭和46年から1年間、新聞で連載され、湖国の観音巡りの火つけ役となった井上靖の小説「星と祭」を復刊しようと、滋賀県長浜市の市民有志がプロジェクト委員会を立ち上げた。来春から復刊の資金集めのため、小説ゆかりの寺院をめぐって参拝客らに復刊本の購入予約をしてもらう「勧進イベント」を開催する計画で、来秋の刊行を目指している。

 「星と祭」は、琵琶湖で娘を亡くした男性が湖国に残る十一面観音を巡って心の平安を取り戻す物語で、長浜市を中心に県内の13カ寺などが登場。湖北地方などに点在する観音像の存在が全国に知られるきっかけになった。現在は絶版状態になっており、新刊を入手するのが困難な状況だ。

 そこで、江北図書館(長浜市木之本町木之本)の館長、明定義人さん(66)ら市民有志約10人が、新たなファンの掘り起こしと地元の観音文化の紹介を目指して昨年5月に、復刊プロジェクト委員会を立ち上げた。

 小説は寺が舞台で中高年のファンが多いことから、インターネットを通じて資金提供を呼びかける「クラウドファンディング」ではなく、寺院造営などの寄付集めにその趣意をしたためた「勧進帳」を持って僧侶が全国を回った勧進方式で復刊本の刊行に必要な資金の調達を行うことにした。

 8日午後1時半から長浜市高月町渡岸寺の市立高月図書館で、明定さんによる小説の内容紹介や、同市地域おこし協力隊員(観音担当)の対馬佳菜子さん(25)が地元の観音信仰について講演するイベントを開催。復刊の意図や協力者の署名を連ねる勧進帳も公開する。

 復刊本には井上靖の直筆原稿や版画なども掲載する予定。勧進の受付額は先行予約として一口5千円。300人分が集まれば復刊本の初版2千冊を印刷し、県内の書店などで販売する。

 明定さんは「星と祭は地域の観音信仰のありさまを大きく取り上げた名著で、災害死という現代的なテーマ性もあり、復刊して広く伝えたい」と話している。

 問い合わせは同委員会メンバーの久保寺容子さん(090・6900・4512)。

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