「おいしい水道水」 銘酒の仕込み水は「東京水」 浄水器も多様化

 水栓をひねれば出てくる水道水。ペットボトルやウオーターサーバーの陰に隠れがちだが、“第3のおいしい水”として見直されている。家計にやさしく場所も取らないというメリットはいうまでもなく、東京都心で唯一の酒蔵でも「酒造りに最適な水」として仕込みに使われている。水道水をよりおいしくする家庭用浄水器も、用途別に独自の進化をとげていた。(重松明子、写真も)

 さわやかな吟醸香。おだやかな甘さとキリッとした酸のなかに、米のうまみが柔らかく広がる-。

 昨年の東京国税局酒類鑑評会で優等賞を受賞した純米吟醸原酒「江戸開城 山田錦」の仕込み水は水道水だ。醸造元はJR山手線田町駅近くのオフィス街にある、東京港醸造(東京都港区芝)。寺澤善実杜氏(とうじ)(57)は「最初からすべて水道水で造ろうと決めていました」と胸を張った。

 京都・伏見に本社がある、大手酒造の醸造技術者だった寺澤杜氏。「東京都の水道水(利根川・荒川水系)は中軟水で、伏見の地下水とよく似た酒造りに適した水です。酒の味や色を悪くする鉄やマンガンはほとんど含まれず、湧き水などに比べて衛生面や安全性が確実。塩素は発酵過程ですぐに抜けます」

 7年前に酒造りを始めた小さな酒蔵は、2年前から念願の清酒造りに着手している。

 同酒造の斉藤俊一社長(63)によると、斉藤家は明治42(1909)年まで芝で酒造業を営んでおり、幕末に西郷隆盛が酒代がわりに渡したとされる書も残されている。俊一社長が「1世紀ぶりの酒造再興」を目指すなかで寺澤杜氏と出合い、口説き、夢を共に追いかけてくれることになり、さまざまな幸運も重なって、再び酒造が芝の地によみがえった。

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