「除夜」ならぬ「除夕」の鐘 騒音クレームに配慮も…日本の風物詩どう残せば

 【ニュースの深層】

 百八つの煩悩を払い、新年を迎える年末の風物詩「除夜の鐘」。近年では「除夕(じょせき)の鐘」として日中に鳴らしたり、中止にしたりする寺院があるという。背景には、近隣住民による“騒音”クレームへの配慮や、高齢者、子供ら幅広い年代が参加可能なイベントにするという今どきの寺院ならではの事情があった。(社会部 高橋裕子)

 ■正午から鳴る鐘

 「うるさいバカヤロー! いつまで鳴らしているんだ」

 十数年前の静岡県牧之原市の大沢(だいたく)寺。大みそかから元旦にかけて除夜の鐘を鳴らしていると、怒鳴り声をあげてすぐに切れる匿名電話が数件、毎年のようにかかってきていたという。

 「お叱りを受けるなら止める」。先代住職の決断で除夜の鐘は中止に。それからの大みそかは、いたずらでも鳴らされないようにと撞木はロープで鐘楼に縛りつけられてきた。

 大沢寺の鐘は戦時中に金属類回収令で供出したが、昭和30年に檀家(だんか)と協力し苦労して再び鋳造したものだ。内側には寄進した檀家の名前がびっしりと刻まれている。現住職の今井一光さん(58)は、「先代の父が中止を決断したが、せっかくの鐘がもったいない。寄進していただいた方にも申し訳ないと思っていた」といい、平成26年秋に檀家の世話人会に再開を提案した。

 その結果、大みそかの午後2時から「除夕の鐘」として復活することが決定。翌27年には、「大みそかは忙しい主婦も参加しやすい時間に」とさらに早め、正午から始めた。27年は檀家の婦人部らの協力で豚汁や焼きイモなどが振る舞われ、約130人の家族連れや高齢者らでにぎわった。「この年になって初めて鳴らした」と感激している高齢者もいたという。今年も名前は「除夕」のまま正午から開催する。

 今井さんは「伝統文化にかたくなにこだわっていては、文化そのものがなくなってしまう。騒音問題になるより形を変えて存続する方がいい」と説明する。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ