岩手・大槌町の被災若者支え続けた奨学金、大阪市立病院の医師ら最後の贈呈

 東日本大震災で被災した岩手県大槌町の中高生を支援するため、大阪市立大医学部付属病院の医師ら有志が創設した奨学金が今年、最後の贈呈を終えた。震災直後に医療チームが現地に入った出会いを縁に、震災翌年の平成24年に開始。大学病院のレストランで寄付を募り、最大10万円を各自に支給し若者たちの夢を後押ししてきた。1千キロの距離を超えた支援が有終の美を飾った。(石川有紀)

 「大学で学ぶ夢を後押ししてもらった」

 高校3年のときに作文選考を経て奨学金を贈られた高木桜子さん(23)は今年、都内の大学を卒業する。当時を振り返り、ほっとした表情を浮かべた。津波で自宅と自営業の父親の事務所が全壊。家計を支える父の負担を思い、大学進学の費用をアルバイトで稼ごうと決めてすぐの受賞だった。大学で観光や地域振興を学んだ高木さんは今春、被災地などで教育支援を行うNPO法人に就職する。大槌町の高校で講義を受け持つ予定という。

 10年前の震災直後、大阪市立大病院の医療チームは、津波で住民の約1割が犠牲になった大槌町の避難所に支援に入った。余震が続く小学校の避難所には、糖尿病や高血圧、ぜんそくなどの疾患を抱えた多くの人が避難していた。カルテが津波で流され、患者も常用薬を覚えていない。不安からか薬の服用を拒む高齢者もいた。

 「カルテやデータではなく、まず患者に向き合い信頼を得る。医療の原点を改めて感じた」。現場で診察した大阪市立大病院の日野雅之副院長(61)が記憶をたどる。

 チームが被災者と顔なじみになった4月11日、医療支援は打ち切りとなった。「大阪弁やジョークに元気をもらった」「また戻ってきてほしい」。被災者から別れを惜しまれたという。

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