聖火ランナーの思いは複雑 「被災地に光を」「感染拡大怖い」

 開幕まで23日であと半年に迫った東京五輪の聖火リレー候補ランナーたちが、新型コロナウイルスの感染拡大に不安を抱えながら、その時を待っている。東日本大震災からの復興五輪をテーマに掲げる東京大会のリレーは3月25日に、福島県のJヴィレッジ(楢葉町、広野町)でスタート。津波や東京電力福島第1原発事故の被害に遭ったランナーたちが、まもなく震災10年となる被災地に希望を照らす存在になりたいと願うが、収束の見通しがつかないコロナ禍の現状に「走りたいが中止もやむを得ない」と複雑な気持ちを抱える。

 「福島は危ないという誤解を自分が走ることで解きたい」

 同県新地町の会社員、鶴岡拓弥さん(25)は原発事故の影響を受けてなおも一部で残る故郷への風評被害解消に貢献したいとして、ランナー募集に応募。2日目の走者に選ばれた。

 震災が起きた平成23年3月11日、鶴岡さんは中学卒業式後、自宅で大きな揺れに襲われ、避難した高台から町をのみ込む真っ黒な津波を見た。その後に味わった苦労を胸に秘め、聖火トーチを持って走る日を心待ちにしていた。

 しかし、この冬の第3波で新型コロナの感染者はさらに拡大、不安が大きく膨らんだ。「年末に東京の感染者が一気に増え、オリンピックをやっている場合かと思った。本音を言えば走りたいが、できなくてもやむを得ない」と複雑な心境を明かした。

 「(コロナ禍で)死者も出ている中でリレーを喜んでもらえるのか」と述べたのは同県田村市の坪倉新治さん(57)。地元の陸上競技の発展に貢献し、聖火ランナーに選ばれた。

 リレーでは現在、地元で指導している和太鼓の教え子ら10人と走る予定にしている。「もし走れるのであれば、地域に明るい希望になれればという気持ちで走りたい。祈るような気持ちでコロナが何とか収束してほしいと願う」と語った。

 福島県に続き、リレー2番目の県となる栃木県。ランナー候補たちは大会延期決定後も、より一層の体調管理に気を配ってきた。

 県内ランナーで最高齢の那珂川町の箱石シツイさん(104)も日々の散歩と体操で準備を続けてきた。しかし、収束しないコロナに思いは揺れている。

 リレーには運営スタッフら多くの人が関わる。「たとえランナーは安全でも、見に来る人は危ないかもしれない」と感じる。「走ってみたい気持ちはある。けれどみなさんが感染してはいけない」と語った。

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