SNSで呼びかけも…防げなかったドカ雪の立ち往生 リスクは都市部も同じ

 1月、北陸地方を記録的な大雪が襲い、北陸自動車道で最大千台以上の車が立ち往生した。影響は市民生活にも広がり、福井県内のスーパーでは品薄状態が続くなどした。実はこの直前、気象庁は短時間で大量に降る「ドカ雪」を観測したことから、大規模な交通障害に注意を呼びかける情報を発表。だが、その後の事態を見れば、ドライバーに周知できていたとはいいがたい。関係機関は情報共有や初動対応について検証を始めた。(西山瑞穂)

 ■事前に警戒情報発表

 10日午後、福井市の北陸道。大雪で足止めされた金沢市の40代男性は疲れた様子で話した。「低体温症になるのが怖くて、仮眠もできない」

 残りのガソリンが少なく、エンジンはかけられない。寒さと空腹に耐えられなくなったといい、徒歩でドラッグストアに向かった。

 立ち往生は9日に始まった。ただこの前日の8日午前、福井市周辺では、大雪への前例のない警戒情報が発表されていた。

 《福井市で6時間で24センチの顕著な降雪を観測しました。この強い雪は9日にかけて続く見込みです。大規模な交通障害の発生するおそれが高まっています》

 令和元年11月の運用開始以来、今回の大雪で初発表となった「短時間の大雪に対して一層の警戒を呼びかける情報」。狙いはまさに「立ち往生の防止」だった。

 ■SNSで呼びかけも

 きっかけとなったのは平成30年の「福井豪雪」だ。大雪警報が発令され、除雪態勢を整えていたところ、状況を知らない車が次々と流入。福井県あわら市から坂井市までの間の国道8号で約1500台の車が立ち往生し、負傷者も出た。

 こうした苦い教訓から、気象庁は大雪に関する情報発信のあり方を見直した。その一つが、今回初めて発表された短時間での大雪警戒情報。このほか積雪状況を地図上に色分けし、視覚に訴えられるようホームページも一新した。担当者は「立ち往生は社会への打撃が大きい。危険性が高いエリアを避けた運転ができるよう、知恵を絞ってきた」と話す。

 北陸道を管轄する中日本高速道路も同様の対応を取っていた。気象予測に基づき、不要不急の道路利用の自粛を呼びかける国土交通省の情報などを発信。SNSで通行止め区間の予測も伝えていた。

 ■効果の有無検証

 だが、立ち往生は回避できなかった。

 中日本高速道路によると、今回は複数区間で雪にはまって動けない車が続発。事故による滞留と、通行止めに伴うインターチェンジ出口の渋滞が重なり、立ち往生を誘発した。

 「事前に通行止めを行えば、今度は国道などが滞留して完全に物流が止まる。それは最悪の事態だ」と同社金沢支社の担当者。「交通量を絞りたかったが、情報が届かなかった」とうなだれた。気象庁の担当者も「新たな情報の効果があったか、なかったか。検証しなければならない」と厳しい表情を見せた。

 事態を重く見た国土交通省近畿地方整備局などは、情報共有や初動対応についての検証を始めた。

 「情報を防災行動につなげるには、出し手と受け手で危機感が共有されなければ意味がない」。元NHK解説委員で、国士舘大の山崎登教授(災害情報)が指摘する。

 山崎教授によると、今回の立ち往生で目立ったのは物流業者のトラック。「行政や高速道路会社は、せめて物流業者とは事前に迂回(うかい)路などの調整をすべきだった」

 もっとも、こうしたトラブルは豪雪地帯に限った話ではない。地球温暖化の影響で大雪の頻度が高まるとのデータがあり、東京や大阪といった都市部でも同種リスクが潜んでいるといえる。特に雪に慣れていない地域では、数センチの積雪でパニックが起きる可能性もある。山崎教授は「日本で自然災害と縁なく暮らすことはできない。油断せず、雪の基礎知識も持っておくべきだ」と訴えた。

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