京アニ事件犠牲の渡辺さん母「これからも作品楽しんで」

 京都アニメーションの放火殺人事件で犠牲になった渡辺美希子さん=当時(35)=は公開中の映画「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」で美術監督を務めた。同作は事件で亡くなった社員の多くが制作陣に名を連ね、鑑賞したファンらからは数多くの評価と感謝の声が寄せられている。渡辺さんの母親(70)は「よう頑張ったね」と制作陣をねぎらいつつ、京アニ再建に向けて活動する社員らに「自分たちのやりたいことをやってほしい」と願っている。

 「ヴァイオレット-」「けいおん!」「ツルネ」…。渡辺さんの実家のリビングや階段には京アニ作品のポスターが所狭しと並ぶ。共働きの両親のもと、小学校のときからよく家事を手伝っていた渡辺さん。絵の道を志し、京アニに入った娘に対し、両親は「どんどんしっかりしていく」と感じていた。実家から離れて暮らすようになっても、毎日のように母娘はLINEで連絡を入れ、お互いを気遣ってきたという。

 渡辺さんが担当してきたのは背景画。キャラクターを邪魔せず、それでいて光の差し込み方など細部にまでこだわって描かれた作品の数々に、母親は「目立つことは好まず、陰で支えることが好きだったあの子らしい」と振り返る。

 「ヴァイオレット-」シリーズは軍人だった少女が戦後、手紙の代筆業を通じ愛の意味を探す物語。平成30年にテレビアニメが放送されるとストーリー性や美しい作画が話題となり、ファンを魅了してきた。その映画作品「劇場版 ヴァイオレット-」は、事件後初めて公開された作品として注目を集めたが、母親の思いは「事件とは無関係に作品としてみてほしい」。

 いまもツイッターなどSNS上で、渡辺さんを含む京アニスタッフや作品への感謝の言葉がつづられることに、「うれしい以外に何もない。『優しい気持ちをありがとう』と美希子は言っているはず」と語る。

 「さみしいし、悲しいし、もの足らんし、気が付いたら寝ながら泣いていたり…」。母親はこれまでを振り返りつつ、ファンや京アニ社員に対し願う。

 「京アニ作品は楽しんでみてほしい。残された社員たちもしんどい思いを抱えているはず。無理せず、自分たちのやりたいことをやってほしい」(秋山紀浩)

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