ガス点検強盗 ツイッター募集の実行役「使い捨て」 背後に特殊詐欺グループか

 ガス設備の点検を装って民家に押し入り、住人を粘着テープなどで縛り上げて現金やクレジットカードを奪い取る「点検強盗」による被害が首都圏で相次いでいる。被害者の多くは高齢者で、荒っぽい手口は死者を出す恐れもあり、警察当局は警戒を強めている。背後には特殊詐欺グループの存在もあるとされ、金を奪うためにより強行な手段を選んだ疑いもある。指示役に捜査の手が及ばぬよう、実行犯をツイッター上で募り「使い捨て」する巧妙な実態も浮かぶ。(松崎翼、王美慧)

 ●周到に「準備」

 「ガス設備の点検に来ました」

 捜査関係者によると、東京都足立区の70代男性宅に2人組の男が訪れたのは9月23日午後3時半ごろのことだった。男らは作業着姿で一見すると怪しい点は見当たらない。男性は言われるままに男らを自宅に招き入れた。男らは少し室内を物色するそぶりを見せた後、態度を一変させた。

 男性は突然、床に押し倒され、粘着テープで手足を縛り上げられた。そして男らは財布から現金約30万円を抜き取って逃走。男性が粘着テープを何とか自力でほどき、110番通報したのは、およそ1時間半後のことだった。

 8月下旬以降、東京や神奈川、千葉の3都県ではこうした点検を装った強盗が少なくとも10件以上相次いでいる。手口は、ガスのほか、電気や消防設備の点検を装うもので、実行犯の男らは、作業着のほか、偽の身分証を携帯する周到ぶりだった。

 ●特殊詐欺から「派生」

 強引さも目立つ。被害者の多くは高齢者だが、捜査関係者は「体力的に抵抗されにくい高齢者を狙っている」とみている。また、実行犯は「手加減」することなく、高齢者らを粘着テープで縛り上げ、そのまま置き去りにしている。その結果、殴られて重傷を負ったケースもあった。

 資産状況を尋ねる電話が犯行前にある「アポ電強盗事件」では、東京都江東区で昨年2月、粘着テープで口付近をふさがれた女性=当時(80)=が窒息死する事件も起きた。犯行態様が似る点検強盗もいつ犠牲者がでてもおかしくない。

 捜査関係者は「電話は留守番機能を利用するなどし直接出ないようにするのも被害防止につながる。点検訪問を受けた際には、所属や名前を聞き、会社に確認するようにしてほしい」と話している。

 今回の事件の被害者には過去にアポ電を受けたり、特殊詐欺の被害に遭ったりした人が確認されている。警視庁の捜査幹部は「点検強盗は特殊詐欺から派生したのだろう。詐欺では金がとれなくなっているから、信じてもらいやすいガスや電気設備の点検を装った強盗が増えたのではないか」と分析する。

 ●実行犯「使い捨て」

 実行犯はツイッター上の「闇サイト」で募られ、犯行の細かい指示などはメッセージが一定時間で消える通信アプリ「テレグラム」が用いられているとみられる。

 また、実行犯がグループから抜けられないような体制も築かれている。捜査関係者によると、闇サイトでの応募段階で、実行犯には身分証を撮影して送信するように要求。実行犯が指示を拒否すると、その身分証の存在をちらつかせ「家を燃やす」「住所をばらす」などと脅すケースも確認されているという。

 指示役と実行犯は顔を合わせることはなく、指示役に容易にたどりつけないような構図が浮かぶ。捜査幹部は「実行役のほとんどは素人で、使い捨てにされているだけ。当たり前のことだが、甘い誘いには乗らないことだ」と話している。

 ●不審な点は連絡を

 東京ガスによると、法令で定められたガス設備の定期点検は4年に1度実施するという。

 その際には、訪問の予定日と時間帯などを記した用紙を、点検日の1~2週間前を目安に、あらかじめ各戸に配布している。

 突然、訪問することはなく、電話で家族構成や資産状況を尋ねることも決してないという。月1度の検針の際もガスメーターが屋外にある場合は、検針員が訪問することはない。東京ガスの担当者は「不審な点があればすぐに連絡してほしい」などと話している。

 問い合わせは、東京ガスお客さまセンター(0570・002211)。受付時間は、午前9時~午後7時(日曜・祝日は午前9時~午後5時)。

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