児童虐待~連鎖の軛 絶対孤立させない 地域のつながり つむぐ住民

親を責めない

 今年8月には奈良でもピーシーズのプログラムが始まった。集まったのは教員志望の大学生から公務員、会社員、自営業者など20~50代の男女12人。来年1月までNPO法人「Living in Peace」(東京)と連携し、奈良の子供食堂などを実践の場として活動する予定だ。

 中には自身が虐待を受けた経験から社会の風潮に疑問を感じる参加者もいる。

 両親がともに国家公務員の会社員、桃井陽菜(ひな)さん(24)=仮名=は小学生のころから教育熱心な母親によくたたかれ、包丁を突き付けられて育った。児相に半年間、一時保護されたこともある。

 周りに頼れる大人はいなかった。「暴力はあっても母は好き。その母が悪者扱いされ、私は憐みの目で見られた。それは体のけがより辛かった」。誰も信じられなくなり、母親のことも憎むようになっていた。

 その後、大学生になって貧困家庭の子供の支援などに携わるようになると、自分の家庭の背景も考えるようになった。「母も孤立し、苦しんでいた」。そう気づくと、わだかまりは次第に解けていった。

 「世間は親を悪者にして責める。でも、それでは問題は解決しない。余裕がなくなれば、誰もが子供を傷つける可能性はあると思うから。母も私も地域につながっていれば、『未病』の時に救えたんじゃないか」。桃井さんはプログラムを通じて、自分にできることを考えていくつもりだ。

 大切に育てられた経験は、自分自身を、さらには周りの人も尊重することにつながっていく。つまり、虐待の連鎖を根本から断ち切るためには、介入による対症療法だけでなく、家庭や子供を見捨てず、孤立させないことこそが重要だ。

 SOSを待つ従来型の「支援」ではなく、自ら網をめぐらし家庭に手を差し伸べようとする市区町村。地域の中でやわらかなつながりを紡ぎ直そうとする住民たち。これらと児相が融合することで初めて、虐待が生まれにくい社会に踏み出すことができる。(西山瑞穂、桑波田仰太、小松大騎)

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