児童虐待~連鎖の軛 生かしきれぬ情報 未然防止へ鍵握る市区町村

 西日本にある政令指定都市の区役所。子育て支援の担当課に勤務する伊藤健司さん(43)=仮名=は2年前の7月、児童手当の申請窓口で順番を待つ女性の顔を見てはっとした。「どこかで会ったことがあるはずだが…」

 児童手当の給付業務は担当外だが、気になった伊藤さんは窓口の担当者にこっそり頼み、提出された現況届を確認した。そこに記されていたのは、5年前までケースワーカーとして働いた児童相談所(児相)時代に関わった笠松詩織さん(29)=同=だった。

 笠松さんは妊娠しても一度も病院に通わず、自分だけで自宅分娩(ぶんべん)を繰り返していた。ネグレクト(育児放棄)の傾向もあり、児相は当時いた3人の子供のうち2人を保護。長女と2人暮らしとなり、児相は継続して家庭の様子を見ようとしたが、なかなか連絡が取れず苦労した記憶があった。

 その笠松さんが区役所に来ている。念のため、児相に電話すると、担当者は慌てた様子で「すぐに本人と電話をかわってほしい。1年近く連絡が取れていない」と訴えた。

 その後、笠松さんが約1カ月前、児相も知らないうちに自宅で女児を出産していたことが判明した。暴行などの痕跡はなかったが、子供を隠すような様子からは、十分な育児は期待できない。児相は生後1カ月の女児を保護し、見守りを再開した。

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