タトゥーの安全性、ルール作りを/大阪の彫師、無罪確定でも残る課題

 入れ墨(タトゥー)を施す彫師(ほりし)を医師法で取り締まることはできない-。最高裁の決定により、安全性をめぐる議論を加速化しそうだ。医師免許がないのに客にタトゥーを入れたとする医師法違反罪に問われた男性(32)の上告審で、最高裁が検察側の上告を退けた。2審の逆転無罪判決が確定する。ただ衛生上のリスクを軽視したり、誰もが施術可能と認めたりしたわけではない。新たなルール作りが求められている。(土屋宏剛)

 「胸を張って、彫師の仕事が間違っていなかったと言える」。大阪府吹田市の彫師、増田太輝さん(32)は18日夜、大阪市内の記者会見で声を弾ませた。最高裁は16日付の決定で、増田さんを逆転無罪とした大阪高裁判決を支持。「これまで支援してくれた人に感謝したい」と話した。

 平成26~27年、客3人にタトゥーを施したとして医師法違反罪で略式起訴され、その後正式裁判となった。最大の争点は、増田さんの行為が、医師法の禁じる「医業」に当たるのかどうかだった。

 29年の1審大阪地裁判決が罰金15万円の有罪としたのに対し、30年の2審大阪高裁判決は「医師でなくともある程度の安全確保は可能」として1審判決を破棄、無罪を言い渡した。

 最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は、検察側の上告を棄却する決定をした。タトゥーを施す際の状況や社会の受け止めを踏まえ、施術は「医療行為には当たらない」と判断。歴史的にも、医師免許を持たない彫師が行ってきた実情があると認めた。

 会見に同席した弁護団の川上博之弁護士は「彫師という職業の存続をかけた裁判だった。タトゥーの歴史的文化的側面も考慮されており、バランスが取れた決定だ」と話した。

 ただ日本では反社会的勢力のイメージからか、タトゥーに否定的なイメージを持つ人が多い。観光庁の全国の宿泊施設調査(平成27年)では、回答を得た約600施設のうち、約56%が入れ墨客の入浴を断っていた。一方、海外では文化や宗教的な理由に根ざしている場合がある。そうした影響から、近年では国内でも若者を中心にファッションとして受け入れる傾向がある。

 最高裁の決定もこうした流れを意識したものだが、衛生上の危険性を放置し、誰もがタトゥーの施術ができると容認したわけではない。針で肌に色素を注入する行為には、アレルギー反応や皮膚障害などのリスクが伴う。草野裁判長は「危険防止のため合理的な法規制が相当ならば、新たな立法によるべきだ」との補足意見を付け、保健衛生上の危険性は医師法以外の方法で防ぐしかないと結論付けた。

 「入れ墨はファッションや文化として定着している。彫師による施術全般を規制するのは現実的ではない。今回の決定には賛成だ」と話すのは、タトゥー除去手術を手がける「かじクリニック熊本」(熊本市)の梶昇吾院長だ。

 ただ、彫師の多くは医師免許を持っていないとみられ、「器具の管理や衛生問題、皮膚障害などが発生した場合の対応で不安な面がある」(梶院長)。安全性を確保するためのルール作りが不可欠だとして、施術前に同意を得ることの義務化や、施術施設の認可制導入などの対策を提案した。

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