「地域とともに復興歩む」球磨川氾濫時は救出活動も ラフティング会社社長、迫田重光さん

 熊本南部を襲った豪雨で熊本県球磨(くま)村など流域に甚大な被害をもたらした球磨川は、ゴムボートで急流を下るアウトドアスポーツ「ラフティング」の九州随一の人気スポットとして知られる。氾濫時は地元ラフティング関係者らがボートで住民らを救出。一方で多くの会社がボートが流されるなどの被害を受けた。営業再開への道のりは険しいが、関係者らは「地元の復興がラフティングの復興」と住民らとともに歩みを始めている。(有年由貴子)

 崩落した鉄橋、押しつぶされた民家、流木に挟まれたゴムボート-。球磨川の氾濫で壊滅的な被害を受けた球磨村の渡(わたり)地区。被災から1週間以上がたった今も、がれきに埋もれた集落がほぼ手つかずのまま残されている。

 「ここが元に戻らないと何も始まらない。今の自分たちにできることは故郷の復興だ」。同地区のラフティング会社「ランドアース」社長の迫田重光さん(53)はこう話す。

 4日朝、堤防を越水した濁流が川沿いの事務所を襲い、2階の屋根まで浸水。高台に避難した迫田さんの目の前で、倉庫に保管していたボートが次々と押し流されていった。

 周囲には住民らが助けを呼ぶ声が響く。「助けなければ」。幸い、近隣住民が2隻のボートを拾い上げてくれていた。流れてきた竹やシャベルで漕いで向かい、無我夢中で屋根に取り残された住民や孤立した特別養護老人ホーム「千寿園」の入所者ら約20人を救出して回った。

 「まさかこの川がこんな風になるなんて夢にも思わなかった」

 約30年前、ラフティングを球磨川に最初に持ち込んだのが迫田さんだった。川でカヌーのインストラクターをしていたころ、知人からその存在を教わり、導入を思いついた。水深の深い球磨川は、落水時にけがをしにくくアウトドアスポーツに向いていた。

 若者や家族連れら新たな観光客を呼び込み、現在では流域に約20のラフティング会社がひしめく観光産業に成長。球磨川は年間4万人が川下りを楽しみに訪れる人気レジャースポットとなった。平成28年の熊本地震で一時客足が落ち込んだものの、徐々に回復の兆しを見せていた矢先、知り尽くしていたはずの川が牙をむいた。

 ランドアースを含む流域の約10社が浸水などの甚大なダメージを負い、ランドアースだけでも所有していた22隻のボートの半数を失った。川には多くの橋が崩落し、危険物の除去作業が完了するまでは営業は再開できない見通しだ。

 高齢者の多い渡地区では、連日の大雨と人手不足が復旧作業を阻む。スタッフらは毎日、地元住民らのもとに駆け付け、民家の片付けや泥のかき出し作業を行っている。

 「俺たちは若くて元気な業界。地域の一員として故郷をもう一度復活させる。事務所の片付けが落ち着いたら、ここをボランティアの拠点としたい」と迫田さん。地域に寄り添いながら、長期戦に臨む覚悟だ。

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