「除斥期間」の壁超えず 裁判長、差別解消の努力求める 旧優生保護法訴訟判決

 旧優生保護法をめぐる30日の東京地裁判決は、男性に対する強制不妊手術の違憲性を認める一方、1例目の仙台地裁判決に続き国に賠償を命じなかった。民法の規定を厳格に適用した判断で、被害回復を目指す当事者にとっては、司法による救済の難しさが改めて突き付けられた。

 当初から原告側には高いハードルがあった。不法行為があっても20年で自動的に損害賠償請求権が消滅する民法の規定「除斥(じょせき)期間」があるためだ。しかし、強制不妊手術は平成8年の旧法改正までは合法で、法改正時点で被害者の98%が手術から20年以上が経過していたとされる。原告側は「除斥期間を形式的に適用するのは正義の理念に反する」と主張。地裁が、除斥期間の適用を例外的に除外するかが注目されていた。

 これに対し、伊藤正晴裁判長は除斥期間を適用した上で「請求権は消滅した」と認定。障害者の権利に関する国内外の議論に触れながら、除斥期間の起算点を遅らせるとしても、旧法の不当性が与党や厚生省(当時)で共有された昭和60年代か、旧法が改正された平成8年までとした。

 また判決は、障害や疾患のない男性に対する不妊手術は「誤った審査に基づいた違法な行為」とし、「憲法で保護された私生活上の自由を侵害する」と認定した。一方で、仙台地裁判決のように旧法自体の違憲性に言及せず、被害弁護団は「仙台地裁判決からも後退した」と厳しく評価した。

 「国は事実と真摯に向き合い、全国民が障害の有無で分け隔てられることのない社会の実現に向けて、国民と不断の努力を続けることが期待される」。伊藤裁判長は最後にこう指摘した。被害者に一時金を支給する救済法は昨年4月にできたが、なお残る優生思想にどう対峙(たいじ)するかを国も国民も考え続けなければならない。(加藤園子)

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