「自分は大丈夫」は危険 コロナ禍は不安につけこむ詐欺の絶好機

 新型コロナウイルスの感染拡大で社会活動が大きく制限されている中、特殊詐欺グループの犯行が活発化している。被害者から現金やカードを受け取る「受け子」は、人出の減少で目立つリスクを抱えながら活動を続け、新型コロナウイルスに便乗する新たな手口も次々と確認されている。専門家は「不安や混乱が広がる現状は、詐欺グループにとって絶好の機会」と引き続き強い警戒を呼び掛けている。

外回り激減なのに…

 4月23日午後2時50分ごろ、大阪市住吉区の公園で大阪府警住吉署員が不審な男(22)を発見した。外出自粛要請で外回りをするサラリーマンが激減する中、スーツ姿で公園内を歩き回っていたのだ。

 この日、同区内では、特殊詐欺グループが高齢者の資産や家族構成を探る「予兆電話(アポ電)」とみられる不審な電話が多発。職務質問の結果、男は不審電話との関与は確認できなかったものの、3月末に発生した別の特殊詐欺事件の受け子だった疑いが強まり、キャッシュカードを取ったとする窃盗容疑で逮捕された。

 大阪府警によると、今年1~3月に認知された府内の特殊詐欺の件数は264件。前年同期比で97件減少したものの、被害額は約6億5400万円で約9300万円も増加。刑法犯全体が減少傾向にある中、高額被害が続いた。

 4月の被害状況は集計中だが、2月は349件、3月は434件だったアポ電をはじめとする不審電話が、4月は中旬までに550件近く発生。新型コロナウイルスの感染拡大に乗じるように増加している。

不安につけこんで

 当然、警察当局は詐欺グループの摘発を強化しており、府警は4月、同月に犯行に及んだ計4人の受け子を逮捕している。

 現在、緊急事態宣言による外出自粛要請で人通りは激減。被害者と直接対面し、移動中に防犯カメラに姿が写りやすい受け子は街中でも目立ちやすい存在となっている。

 逮捕のリスクが高まっていることは、犯行の歯止めとならないのか。ある捜査幹部は「特殊詐欺グループにとって受け子は捨て駒にすぎない。逮捕されても気にせず代わりを集めるだけだ」と指摘する。

 受け子は、「高額報酬の裏バイト」といった誘い文句が記されたツイッターなどの会員制交流サイト(SNS)で募集されることが多く、コロナ禍で生活困窮者が増えることで、受け子に手を染めてしまう人がむしろ増えることが懸念されている。

 特殊詐欺の現状について、立正大の西田公昭教授(社会心理学)は「政府の方針が突然変わったり、情報が錯綜(さくそう)する現状は、犯罪者にとって絶好の機会。詐欺グループは社会情勢に応じて新しいだまし文句をどんどん考え出す。従来の手口を知っていても、不安な心理状態ではのみ込まれてしまう」と警鐘を鳴らす。

 実際、アポ電の内容は社会情勢にあわせて変化している。感染が広がった当初は、「下水管に新型コロナウイルスが付いているので洗浄します」と不安につけこむ電話があったが、一部の公的窓口が職員の感染確認で縮小すると、それを利用して「還付金がある。市役所はコロナで窓口が封鎖されている」とATMへ誘導する内容のものが登場。さらに、政府が一律10万円の給付を決めると「10万円の給付金を受け取りますか」という不審電話が目立つようになった。

「自分は大丈夫」は危険

 不安定な社会情勢は長期化する恐れがあるが、詐欺被害を防ぐためにどのようなことを心がけるべきか。西田教授は「人は自分は被害に遭わない、詐欺の手口を理解していると根拠のない自信を持ってしまうが、自分は大丈夫だと思わないことがまず大事」とした上で、「相手が公的機関を名乗っていても確証が持てないなら、すぐに通報したり、信頼できる人に相談したりすべきだ」と話す。

 府警は自宅ですぐにできる対策として、固定電話を留守番電話に設定することや、自動録音装置のある電話機の設置を推奨している。

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