ゴーン被告“暗殺危機” 逃亡先レバノンは政情不安、富裕層への反感で矛先向く恐れ

 確かに、ゴーン被告が経由したトルコの警察当局者は、ビジネスジェット機のパイロット4人、空港職員2人、貨物会社のオペレーター1人の計7人を逮捕した。同国の民間ジェット機運航会社「MNGジェット」は、自社のチャーター機サービスが被告の逃亡に「違法に使われた」と発表、関係者を刑事告訴した。

 また、レバノンの弁護士グループは、ゴーン被告が過去に敵対関係にあるイスラエルに入国したのはレバノンの法律で犯罪となるとして、同国検察当局に告発した。仮に有罪となれば最長で禁錮15年の刑を受ける可能性もあるという。

 日本はレバノンに多額の支援(円借款やODAなど)をしている。「お尋ね者」を取り戻す手立てはないのか。

 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は「レバノンは、湾岸の富豪がお金を持ち込み、金とコネの力で決まる」「政府はキリスト教マロン派から大統領、イスラム教スンニ派から首相、イスラム教シーア派から国会議長を出して“シマ”を分け合っており、ゴーン被告は『マロン派の客人扱い』と考えられる」と解説する。

 微妙な均衡を保つレバノンだが、1982年には大統領が、2005年には元首相が暗殺されている。最近では腐敗や格差拡大に不満を持つデモも起きている。

 中東情勢にも詳しい軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「レバノンはひと握りの人間に富が集中しており、国の負債が大きく、インフラ整備や福祉などに支出する予算が組めない状態にある。多くの人は生活が厳しくビジネスマンも国外に脱出しており、富裕層への反感や不満がデモ、強盗、テロなどの形で爆発する可能性もある。民衆のフラストレーションがゴーン被告に向き、身の危険にさらされるかもしれない」と語る。

 日本では、ゴーン被告の国外逃亡に対して怒りの声が強いが、欧米諸国、特にゴーン被告が国籍を持つフランスでは、今回の行動に理解を示す向きも多いという。

 元通産官僚で、フランス国立行政学院(ENA)にも留学した評論家の八幡和郎氏は「世界では、刑事被告人の海外逃亡は珍しくないうえ、長期間、身柄を拘束して『人質司法』と呼ばれる日本の司法制度への不信感も根強い。欧米諸国の理解を得るためにも、日本でも保釈後の被告にGPS発信機を装着し、行動を監視する制度を整備すべきだ。人権派や左派野党は反対しているが、先進国では常識だ。欧米並みの司法制度、監視体制を整えることは、日本の国益にも合致する」と語っている。

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