芸能界むしばむ薬物汚染、密売人の標的に 沢尻エリカ容疑者逮捕

 合成麻薬「MDMA」を所持したとして、麻薬取締法違反容疑で女優の沢尻エリカ容疑者(33)が警視庁に逮捕された事件では、芸能界をむしばむ薬物汚染の一端が改めて浮き彫りになった。今年に入ってから俳優やミュージシャンら著名人の摘発が相次いでおり、華やかさの一方で浮き沈みの激しい業界特有のストレスに密売人がつけこむ構図も。元芸能人による再犯も後を絶たず、薬物依存から抜け出す難しさを物語っている。

根底には意識の薄さ

3月には、関東信越厚生局麻薬取締部がコカイン使用容疑で俳優のピエール瀧さん(52)を逮捕。その後も捜査当局による摘発は続き、アイドルグループ「KAT-TUN(カトゥーン)」元メンバーの田口淳之介さん(33)や、ロックバンド「Dragon Ash(ドラゴンアッシュ)」メンバーだった金子賢輔さん(33)が大麻所持容疑で逮捕された。いずれも執行猶予付きの有罪判決が言い渡されている。

 「(薬物以外に)ストレス解消の手段がなかった」(瀧さん)、「仕事や人間関係のストレスが一番の原因だった」(田口さん)。公判で語られた薬物使用の動機には、精神面についての言及が目立つ。

 運にも左右されがちな芸能界では人気を維持するため、大きな重圧が生じる。薬物犯罪に詳しい原田隆之・筑波大教授(犯罪心理学)は「過大なストレスが薬物使用の引き金となる構造的な側面は否めない。だが、薬物に手を出すのは一部の芸能人であることを踏まえれば、反社会的な行いに対する個人的な意識の薄さが根本的な問題だろう」と指摘する。

知人同士で融通

 違法薬物の密売人からすれば、資金力のある著名人は継続的に収益を上げられる格好の標的だ。

 芸能ジャーナリストの佐々木博之氏は「本人にその気がなくても密売人の方から接近してくる。著名人の客も多い渋谷や六本木などのクラブでは誘惑を受けやすい」と話す。「芸能人と密売人をつなぐ仲介役も存在するほか、知人同士で薬物を融通し合うこともある」(捜査関係者)という。

 沢尻容疑者もMDMA入手の経緯を「クラブのイベント会場で知人にもらった」と説明。沢尻容疑者が逮捕前日に訪れた渋谷区にある別のクラブでは今月10日、警視庁が店から出てきた金融トレーダーの男(30)をMDMAの使用容疑で逮捕しており、クラブやイベント会場で「パーティードラッグ」と呼ばれるMDMAが乱用されている恐れがある。

再犯防止が課題に

 違法薬物の特徴である依存性に伴う再犯も深刻な問題だ。

 今月6日に覚醒剤所持容疑で宮城県警に現行犯逮捕された元タレントの田代まさし容疑者(63)は過去にも複数回にわたり薬物で摘発されており、7月にはNHK番組に出演して薬物依存の怖さを訴えていた。

 NHKの子供向け番組で「歌のお兄さん」を務めた50代男も覚せい剤取締法違反の罪で昨年執行猶予付きの判決を受けながら、今年9月に大麻の所持が発覚、その後に覚醒剤を使用した容疑で逮捕されている。

 警察庁によると、平成30年の覚醒剤による摘発は1万人を超え、再犯者率は65・9%に上る。12年連続の増加で過去最高となり、薬物常習者の社会復帰は大きな課題となっている。

 アルコール・薬物問題に取り組むNPO法人「ASK(アスク)」の今成(いまなり)知美代表は「逮捕報道に『またか』と感じる人は多いはずだ。しかし、突き放しては解決にならない。社会全体で薬物依存が病であることを理解し、粘り強く立ち直りを支援していくしかない」と話している。

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