首里城火災、鎮火まで11時間を要した「複合的要因」

 那覇市の首里城で31日未明に起きた大規模火災。消防は鎮火までに約11時間を要し、被害は首里城の中心的な木造建築物である「正殿」を含む主要7棟4千平方メートル以上に及んだ。城壁に囲まれ、高台に位置する首里城の立地条件や建築物が密集している構造が、効果的な消火作業の妨げとなったとみられる。一方で、火元とみられる正殿には、スプリンクラーが設置されておらず、専門家は「複合的な要因が重なったことで鎮火が遅れ、延焼被害が拡大した」と指摘している。

 「巨大なガスストーブに向けて消火したような感じだった」。那覇市消防局警防課の新城敏行課長は消防隊員が目の当たりにした火災現場をこう表現した。

 市消防によると、現場は正殿や北殿、南殿、奉神門(ほうしんもん)が『ロ』の字形に中庭を囲み、いろりのように熱がこもりやすい構造だった。出火元とみられる正殿から発せられた放射熱が近接する建物を熱し、自然発火した可能性がある。消防隊員は通報から約7分後には現場に到着したが、強烈な放射熱の影響で、中庭で放水していた消防隊員を撤退させざるを得なかったという。

 また、城壁に囲まれた首里城への進入口は限定されており、首里城直近にある2つの防火水槽から取水して放水するには、城壁を迂回(うかい)しながらホースを延長するため時間が取られたという。新城課長は「首里城は標高約120メートルの高台で風の影響を受けやすく、城壁に囲まれた特殊な環境だった。鎮火まで約11時間かかった要因はこれから検証していきたい」と語った。

 一方、山林火災などで出動する「消防防災ヘリコプター」による空中放水はできなかったのか。消防庁によると、沖縄県は現在、防災ヘリが配備されていない。担当者は「何トンもの水を落として消火する空中放水は、消防隊員や近隣住民にけがをさせる恐れがあり現実的ではない」とした上で「防災ヘリを昼間に飛ばし、俯瞰(ふかん)で現場をみて火の手の広がり方や延焼状況などを無線で伝えることは可能だろう」と指摘する。

 火の手を早めた要因の一つに、出火元とされる正殿に使われた沖縄独自の琉球塗装も指摘されている。首里城の復元事業に携わった沖縄県立博物館・美術館の田名(だな)真之館長によると、正殿には琉球王国の文化を象徴する鮮やかな朱色の塗装が施されていた。この塗装は、アブラギリの種から採取した「桐油(とうゆ)」に顔料を混ぜたもの。田名館長は「桐油を含んでいる分、高温になりやすく火の勢いが増したのだと思う」と話す。

 消防などは1日、約100人態勢で首里城の防火設備が作動していたのかなどを実況見分で調査。首里城の建物は文化財に指定されておらず、消防法に基づくスプリンクラーの設置義務はない。正殿には建物外側に水の膜をつくり、外からの延焼を防ぐ「ドレンチャー」が付いており、正常に作動していた。

 日本防火技術者協会(東京)の鈴木弘昭理事は「建物が密集し、スプリンクラーが付いていなかったことなど、複合的な要因が重なり、鎮火まで長い時間を要したのでは。建物間に防火シャッターを整備するなど延焼を食い止める仕組みが必要だった」と話した。

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