台風19号 毛布にくるまり避難所暮らし 豚汁の炊き出しに「涙が出る」 埼玉・坂戸

 台風19号の記録的な豪雨で河川が氾濫し、民家などが孤立した埼玉県坂戸市では、水がひいた14日も自宅に帰ることができない住民ら約50人が、市内の避難所に身を寄せて、毛布にくるまりながら過ごしている。市は同日午後6時ごろ、炊き出しを用意し、避難住民らは「温かくておいしい。涙が出る」と喜んだ。

 炊き出しは白ご飯、ふりかけ、豚汁で、市職員らが市内のスーパーマーケットで100食分を購入、準備した。災害協定などを結んでいるスーパーや薬局から歯ブラシや紙おむつなどの生活品のほか、カップラーメンなども救援物資として届いた。浸水した東坂戸団地に住む斉藤俊夫さん(69)は「体に染みるおいしさで元気が出る。本当にありがたい」と完食した。

 斉藤さんは、妻の康子さん(71)と一緒に自宅から避難所の小学校まで歩いて避難したといい、当時「胸まで水があった」という。台風が県内を通過した13日未明、ふと目が覚めた康子さんが窓を開けると、いつもの風景は一変。雨風もなく満月と街灯が漆黒の水面に映り、河川の氾濫で自宅周辺が水浸しになっていると分かった。まるで湖のようだった。

 寝ていた斉藤さんを慌てて起こし、急いで避難準備をしたが、雨水は自宅の中に入ってきた。斉藤さんは「あのとき妻が起こしてくれなければ、死んでいたかもしれない」と振り返る。

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 小学生の息子2人を含む家族5人で避難した会社員の成田昭嘉さん(50)も自宅1階が浸水し、救助された。12日深夜、車の盗難アラームの音で目が覚め、河川の氾濫に気付いた。避難のために2階で子供の服などを運ぶうちに停電、玄関から入った水は、じわじわと水位を上げた。

 「家族そろって救助されたので、大きな不安はなかったが、まさか自宅が浸水するとは思っていなかった。もう台風は去ったあとだったのに」と成田さん。14日、避難先から自宅の様子を見に行ったが、泥にまみれていた。日常の暮らしにいつ戻るか見通せないが、「落ち込んでいる姿を子供に見せないようにしている。困っていることはお風呂ぐらい」と笑顔をみせる。

 14日の坂戸市は台風一過で晴天となった13日から一転して雨模様。泥まみれになりながら、片付け作業を続ける住民らに追い打ちをかけた。同日夕、浸水した自宅から家財を庭に運んでいた50代の男性は「1階は水浸しになった。また雨が降ってきて、さらに被害が出ないといいが…」と不安そうだった。

 東坂戸団地は全250戸が断水し、1階(50戸)が床上浸水した。団地の目前に流れる河川は茶色く濁り、水かさを増したままで、川沿いの桜並木は枝が無残に折れていた。市は15日夜から「老人福祉センターことぶき荘」浴場を開放する予定だ。(飯嶋彩希)

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