海上自衛官の贈収賄発覚から1カ月 問われる組織の自浄能力

 海上自衛隊への食品納入をめぐって、便宜を図る見返りに接待を受けたとして、現役の海上自衛官と食品製造会社の社長ら3人が贈収賄容疑などで神奈川県警に逮捕されてから、9日で1カ月。自衛官は横浜市内のクラブで100万円を超える額の接待を受けていた。全国的にも海上自衛官の逮捕件数は9月中に5件と相次ぎ、うち2件が県内だった。「海自の閉鎖的な風土が原因なのではないか」(捜査関係者)との声もあがっており、海上自衛隊の組織のあり方が問われている。

 海上自衛隊の横須賀造修補給所に所属する2等海曹、今井伸幸被告(47)=収賄罪で起訴=と食品製造会社「明食」の社長、吉田公一被告(52)=贈賄罪で起訴=は、今井被告の先輩に当たる元海上自衛官の橋本浩彰被告(58)=詐欺罪で起訴=を通じて知り合った。以降“悪友の関係”が続けられてきたという。

 ■食品すり替え

 今井被告は組織のなかで、艦船の乗組員のための食品の管理や納入品の検査を担当していた。しかし、平成28年12月ごろから30年5月ごろまでの間、同社が契約とは異なった、売り物にはならない食品を納入している事実を約40回にわたって黙認。同社は海自側が発注した食品を、消費期限が迫るものなどにすり替えて納入することで不正に廃棄費用を浮かせていた。本来、納入すべき品物は「フランクフルト」であるにもかかわらず、売れ残りの「ケーキ」を持ち込むなどのいい加減な例も、今井被告は“スルー”していた。

 そのほかにも、今井被告は別の納入業者に対し、「発注した規格と異なっている」などと難癖をつけ、ライバルの参入を阻むなど、複数の便宜を図っていたとされる。その見返りとして、今井被告は吉田被告から横浜市内のクラブで20回以上にわたり、約110万円相当の接待を受けていたという。

 捜査関係者によると、今井被告のように収賄罪に問われる人物には「職場では有能で、ある程度、業務に裁量権がある」という特徴がある。同社の検査は全て今井被告が行っていたとみられ、捜査関係者は「現場で率先して検査を引き受ける今井被告の姿は『仕事ができる人』と周囲の目には映り、疑われることはなかったのではないか」と分析している。

 ■用意周到な犯行

 また、発注品と異なる食料が積まれた船に乗る同僚に対して、今井被告は「(発注と違うが)他の船で使うから」などと言って、丸め込んでいたといい、犯行の用意周到さがうかがえる。もっとも、今井被告のケースは氷山の一角に過ぎない。このところ、現役の海上自衛官の不祥事が続発しているからだ。

 9月は全国で計5人の海上自衛官が暴行や窃盗などの容疑で逮捕されており、同月2日には京急線横浜駅構内で女性に体液をかけたとして、暴行の疑いで海自の1等海尉が逮捕されている。つまり、今井被告の事件は同月に県内であった2件目の逮捕事案だった。

 今回の事件を受けて、海上自衛隊は横須賀地方総監部の幕僚長を委員長とする調査委員会を設置。横須賀地方総監部は取材に対し、「再発防止に向け、組織の仕組みに不具合があったかどうかを含めて長期的に調査する」としている。

 捜査関係者も「海自は昔から『閉鎖的な組織』との指摘があった。これを機に、悪い部分が改善されればいいが」と話す。海上自衛隊の相次ぐ不祥事。県警は今井被告らに余罪があるとみて、捜査を進めている。

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